東京都、特商法違反で3社を処分 美容液、育毛剤の通販会社に業務停止&禁止3カ月
東京都はこのほど、特定商取引法に基づき、美容液・育毛剤の販売を行っていた3事業者に対して、通信販売業務の一部を3カ月間停止するよう命じた。これに伴い、3事業者の代表取締役である高橋史弥に対しても、停止を受けた通信販売業務を新たに開始することを同期間禁止。さらに電話勧誘販売業務の改善も指示した。
3社の代表は同一人物
業務停止命令を受けたのは、美容液化粧品を販売する㈱LIALUSTER(リアラスター、東京都渋谷区)、育毛剤などのヘアケア用品を販売する㈱hairju(ヘアージュ、東京都目黒区)、美容液化粧品ならびにヘアケア用品を販売する㈱TRIBE(トライブ、東京都渋谷区)の3社。
いずれも高橋史弥が代表を務めており、同氏は3社が行う通販における業務全般を統括管理し、営業方針を決定するとともに、営業に関する指揮命令を行うなど、業務停止を命じられた業務の遂行に主導的な役割を果たしていた。
3社は、「バナー広告」や「記事LP」、「商品LP」、ユーザーが商品を購入した後に表示される「サンクスページ」などを通じて不当表示を行っていた。誇大広告、広告表示義務違反、書面記載不備、迷惑解除妨害など複数の違反行為が認定されている。
1,161件の苦情、被害額は平均2万4,000円
主な違反行為としては、通信販売における誇大広告において、「○○で大ヒット」「2023 年○○で爆売れ」などと、あたかも著名な大規模小売店舗などで取り扱いがあり売れ行きが大変好調な商品であるように表示していたが、実際は、このような大規模小売店舗における育毛剤の販売実績はなかった。
また、実際に含まれていない成分を掲げ、美容液について「たるんだフェイスラインごと深いシワを持ち上げる」などと表示。育毛剤についても「白髪染めの代用品が凄い」などと白髪が元の髪色に戻る効能があるかのような表示を行っていた。
同じく通販における広告表示義務違反では、「特定商取引法に基づく表記」の通信販売に関する業務の責任者として、従業者でもなく、通信販売に関する業務を全く行っていない者の氏名を表示していた。
電話勧誘販売において、商品に同梱した書面に事業者名等(法人名、代表者名)などの記載を行っていなかった(書面記載不備)。さらに、消費者から電話によりクーリング・オフの申出を受けた際に、商品を受け取り使用するよう勧め、受け取らない場合でも商品代金相当額の支払いを求めるなどしていた(迷惑解除妨害)。
都内において、対象事業者に関する相談は2020年度から今年度にかけて1,161件あり、平均被害金額は1人当たり2万4,100円だった。
ヘアージュについては、今年1月~9月にかけて、特定適格消費者団体の(特非)消費者支援ネット北海道(北海道札幌市、松久三四彦理事長)が申入れ活動をめぐるやり取りを続けていた。
【解 説】
最近、特定商取引法による行政処分が相次いでいる。なぜなのか?
その背景には、2022年6月1日に改正された特定商取引法において、詐欺的定期通販に対する強化、送り付け商法対策の強化、消費者利益の擁護増進に向けた規定の整備などがある。
10月末に経済産業省が公表した「消費者相談動向」でも、特商法関係が全体の66.4%に当たる4,774件を占めており、前年よりも5.1%増加している。中でも通販や電話勧誘販売に関する相談が多いという。
(独)国民生活センターが9月にまとめた「65歳以上の生活相談」でも、年齢に関わらず共通して多かったのが「化粧品」や「健康食品」に関する相談で、特に、定期購入に関連するトラブルが目立っている。
このような背景から、消費者庁も東京都も、消費者被害の大きな定期購入取引に対する執行の強化を図っているようだ。
それではなぜ、化粧品やヘアケア商品に対する執行が多いのか? また、景品表示法ではなく特定商取引法による執行が続くのか? そういう疑問が浮かばないだろうか? 専門家に聞いてみた。(つづきは会員専用記事閲覧ページへ)
【田代 宏】
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