CRN、最新「原材料標準書」紹介 食品開発展2024で業界向けセミナーを開催
(一社)日本栄養評議会(CRN JAPAN、徳丸浩一郎理事長)は23日、食品開発展2024において「原材料標準書改訂書式セミナー」を開催した。同評議会(以下、CRN)の大曲泰史副理事長が第8版 「健康食品原材料標準書」について解説した。
原材料標準書の改訂とCRNの活動紹介
大曲氏は、CRNの歴史と同標準書作成に至る背景について紹介した。CRNは「食の安全性確保」、「食品機能の研究と啓発」、「健康食品産業の振興」を理念とし、1995年に「食の安全と機能研究会」として発足、今年30年を迎える業界団体。
原材料標準書の初版の作成は2004年のことだった。当時、海外からの輸入品において、我が国と海外の法律内容の違いにより、日本の食品衛生法では指定されていない食品添加物が使用されるケースや、原料メーカーから事前に入手していた情報とは異なるアレルギー物質が実際の製造で使用されているケースなどに直面した。原材料表示が商品に記載されていなかったことから回収に至るなど、さまざまな問題が多発。そのためにCRNは、会員でもある受託加工メーカーに対して正しい原料選定を行ってもらおうと、原料に必要な情報をまとめた「原材料情報書」(当時)の書式を作成し、健康食品の安全性確保を目的に会員に提供することにした。これが今の原材料標準書の原型となる。
その後、コンセプトの見直しなどを進め、第7版、第7.2版と改訂を重ねてきた。さらに、会員限定でリリースしていた同標準書を誰でも使用できるように、ホームページ上でフルオープンし、業界全体のレベルアップに努めてきた。
原材料標準書の改訂、業界平準化へ
今年3月14日、厚生労働省はいわゆる平成17年通知「「『錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針(ガイドライン)』及び『錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)』」を廃止し、新たに別添1「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針(ガイドライン)」、別添2「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」を発出した。通知発出の3月11日の日付を取って、通称「3.11通知」と呼ばれるものである。
CRNでは、同通知に合わせて改訂作業を急ぎ、「無事、このタイミングのリリースに間に合わせた」(大曲氏)としている。「第8版 原材料標準書」は、CRN内にある「安全と機能検討委員会」の下部組織のチーム16人によって作成された。
健康食品の品質と安全性に関するシートの説明
同書は、1.原材料及び基原材料に関する情報、2.原材料規格及び栄養成分、3.原材料情報(3.11通知別添1のSTEP1「製品の製造に用いる全ての原材料が何であるか明確にすること。各原材料を点検対象原材料とそれ以外の原材料に分類すること」に対応)、4.製造管理・品質管理(3.11通知別添1のステップ2の③「適正な製造工程管理の下、一定の品質で常に製造されていること」に対応)、5.包装仕様について、6.農薬等について、7.有害物質/放射性物質について、8.別紙「食経験情報の収集と評価」(3.11通知別添1・ステップ3「点検対象原材料及び当該原材料の食経験に関する情報を収集し、喫食実績を評価すること」に対応)――から成る。
標準書はエクセル形式で構成されており、各シートには法律要求事項や品質、安全性関連項目が含まれる。各シートごとに記入例や解説書も用意、自主点検ガイドライン確認表を追加し、安全性チェックを強化した。
同標準書はCRNのホームページからダウンロードできる。
説明後、大曲氏が会場で聴講していた消費者庁食品表示課保健表示室の今川正紀室長に感想を求めたところ、マイクを渡された今川室長は、「CRNさんの回し者ではない」と断った上で、「こういった自主点検の用紙とか、CRNさんが今までやってきたものなどさまざまなものを活用しながら進めていくのは非常にいいこと。消費者庁が出すものを使ってもらうのもいいし、何を選ぶかは事業者さん次第だと思う」とCRNの試みに一定の評価を与えた。
【田代 宏】
(文中の写真:聴講者に配られた「原材料標準書」)