オートファジーの概念、人口膾炙めざす 製品名に掲げた「生活習慣」を切り口に
オートファジー活性化機能に着目したサプリメントに現在最も力を入れている日本の食品メーカーだと言える。キャンディやグミなど製菓メーカーのUHA味覚糖㈱(山田泰正社長)。オートファジー研究者として著名な吉森保氏が率いるベンチャー企業と密接に連携しながら製品開発などを進めている。「日本が世界をけん引しているオートファジー研究の社会実装を、当社が得意にしている食品の分野で実現したい」と話す。
APGOと共同開発のサプリメント2製品
「オートファジー習慣」。英訳すると「Autophagy Lifestyle」。UHA味覚糖が現在のところECのみで販売しているオートファジー関連サプリメントの製品名にはそう掲げられている。健康を保つために、日々の生活に、細胞の健康を保つオートファジーの概念を取り入れようというメッセージを込めた。同社のバイオ開発ディビジョンリーダーを務める松川泰治執行役員はそう語る。
「オートファジーの活性は有酸素運動などを行うことでも高まると報告されている。だからサプリメントはワン・オブ・ゼム。オートファジーの活性を高めるための生活習慣を総合的に提案していきたい」(同)。
現在2製品を販売している。第1弾製品の発売は2020年7月。吉森氏が19年に創業したベンチャー企業、オートファジーゴー(以下、APGO)と共同開発した。APGOを含む国内外のオートファジー研究で得られた知見を踏まえ、ポリアミン含有米胚芽エキス末、レスベラトロール、(トランス型)、アスタキサンチンを配合した。
そして23年2月、第2弾製品『オートファジー習慣 PLUTINUM』を発売。引き続きAPGOと共同開発したもので、シリーズの主力製品の位置づけ。インフォーマーシャルなど販促活動を積極的に展開していることもあって、「売れ行きはとても良い」(バイオ開発ディビジョン担当者)。60粒(約1カ月分)で1万2,960円(税込)と1箱1万円を超える高価格帯ながら、定期購入の顧客を着実に増やしている。
第2弾製品の主要成分は、ヒト由来の培養細胞を使用するオートファジー活性評価法を確立したAPGOが実施した試験で活性が確認されたウロリチンAとレスベラトロール(トランス型)の2つ。両成分を組み合わせることで、それぞれ単体に比べて活性が強まることも確認した。その上で、製品化にあたっては、同社独自の食品加工技術を採用。口の中で素早く溶ける特許出願中の製剤技術を施し、即溶性のチュアブル錠に仕上げた。「UHA味覚糖らしく、風味付けにもこだわり、美味しく摂取できるサプリメントになっている」(同)。
創立以来の企業理念に「ヘルスケア」
そもそもオートファジーになぜ注目したのか。
「当社はお菓子のイメージが強いと思うが、創立当時からサプリメントの考え方はあった。創立は1949年。戦後の栄養不足の中、庶民でも手に入るアメを作ったところから当社は始まっている。『おいしいものは、からだにいい。からだにいいものは、おいしい。』という発想で製品作りをずっと行ってきた。その意味で、当社はもともとヘルスケア企業。日本が世界をリードするオートファジー研究の成果を社会実装するために、美味しく、手軽に摂れる食品の開発に強みを持つ当社だからこそ出来ることがある」(同)。
同社の山田社長がAPGO創業前の吉森氏と出会い意気投合した、という背景もある。山田社長は、オートファジーはヘルスケアの新しいテーマになると理解し、APGOの立ち上げを支援。その後、現在までに2回にわたる第三者割当増資を引き受けた。
「オートファジー活性が人で測定できるようになれば画期的。ブレイクスルーを起こせる。当社としてもAPGOの研究を全力で支援していきたい」(松川執行役員)。
【石川太郎】
(文中の写真:昨年発売の第2弾製品『オートファジー習慣 PLUTINUM』)
<COMPANY INFORMATION>
所在地:大阪市中央区神崎町4番12号
TEL:06-6767-6000
URL:https://www.uha-mikakuto.co.jp
事業内容:菓子・食品製造販売
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