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研究成果を社会実装する前線基地 オートファジー活性評価サービスのAPGO、今後新たな事業も

 食品成分などのオートファジー活性評価サービスを手がる㈱AutoPhagyGO(石堂美和子社長。以下、APGO)。オートファジー研究成果の社会実装を加速させるため、オートファジー研究で世界的に知られる吉森保・大阪大学大学院医学系研究科教授(現特任教授)が立ち上げたベンチャー企業だ。今後、活性評価サービス提供以外にも事業を広げる構え。健康寿命延伸をめぐる世界規模のコンペティションにも挑む。

進める企業との共同研究 収益を研究に還元

 APGOは2019年設立。「細胞の再生を司る、オートファジー研究の成果を通じて、広く健康長寿に貢献する」ことを理念に掲げる。酵母のオートファジーの仕組みを解明したことでノーベル生理学・医学賞を受賞(2016年)した大隅良典博士と1996年から研究を共にしてきた吉森氏が立ち上げた。

 企業との共同研究で得られた知見やノウハウを活用しながら、オートファジー研究成果を国内外のヘルスケア産業に実装し、そこから得られた資金を大学との基礎研究や臨床試験に循環させるという、新しいタイプの大学発ベンチャーのビジネスモデルを将来的に確立させたい考え。実業家の成毛眞氏をはじめUHA味覚糖㈱など企業からの出資も受けている。

 オートファジー研究成果を実装させた創薬をめざす研究開発も進めている。ただ、医薬品の開発は長期間を要する。そのため、当面の事業領域は、人々の健康維持・増進に貢献するヘルスケアになる。

 基幹事業は、人に由来する培養細胞を使用したオートファジー活性評価サービスの提供だ。吉森氏が発見したオートファジーのために働くタンパク質「LC3」の性質を利用し、培養細胞内でオートファジーが実際に進行しているかどうか、活性化されているかどうかを、正確に判別する試験受託サービスを展開(活性評価法について詳しくは、21日付既報の吉森保氏インタビュー記事を参照)。これまでに、食品メーカーをはじめとする企業との共同研究を通じて、オートファジー活性機能を持つ成分をさまざま見つけ出している。

 同サービスについては昨年、メタボローム解析試験受託事業を手がける東証グロース市場上場企業、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ㈱(山形県鶴岡市)と業務提携し、同社がサービス提供窓口を全面的に担うようになった。これにより、営業・提案力が強化されたこともあり、「おかげ様で受注件数が伸びている」(石堂社長)。

挑む、新規事業と「Xプライズ」

 一方、APGOは、企業からの依頼に応じてオートファジー活性評価を行うのとは別に、同社独自にオートファジー活性を持つ食品成分の探索を進め、有望な成分を発見、同成分を含むサプリメント向け原材料の開発も進めている。

 「現時点では詳細を明らかに出来ない」(同)が、年内にも発表する予定。同社として外部企業への原材料販売に乗り出し、オートファジー活性評価サービス以外にも事業の領域を広げていきたい考えだ。ただ、「優先する必要のある企業もある。それに、供給可能量の課題もある。当面のところ、大々的に供給することは難しいと考えている」(同)という。

 APGOはベンチャー企業。だからチャレンジもする。健康寿命を10年以上延伸させる(10歳以上若返らせる)介入に成功したら総額1億100万ドル(約150億円)の賞金を出す──。同社は先ごろ、米国の非営利団体「Xプライズ財団」が主催する世界規模のコンペティション「XPRIZE HEALTHSPAN」に挑む考えを表明した。

 同社によると、このコンテストで健康寿命延伸の指標とされるのは、60歳以上80歳未満男女の運動機能(筋力)、認知機能、そして免疫機能の3つ。どれも日本の機能性表示食品のヘルスクレームでうたわれているものだが、勝者となって150億円を得るためには、何らかの介入によって、それらを10年分取り戻せることを実現、証明する必要がある。石堂社長はこう話す。

 「オートファジーの活性を包括的に高めるというアプローチで挑みたい。もちろん、簡単ではない。ただ、勝者になれなかったとしても、積み上げたデータや知見はしっかり残る。日本のヘルスケア産業を盛り上げるチャンスにもなると思う」

【石川太郎】

<COMPANY INFORMATION>
所在地:大阪府吹田市山田丘2番1号 大阪大学産学共創A棟 406
URL:https://autophagygo.com/
事業内容:バイオ研究開発事業

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