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エビデンス入門(73) 臨床試験における評価項目設定の妥当性

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科 准教授 竹田 竜嗣

 臨床試験実施時においては、さまざまな評価項目を設定する。例えば、生活習慣病関連であれば、血中のマーカーなどを設定する。長期的なLDLコレステロールの変化を確認するような試験であればLDLコレステロールが評価項目になる。このように、特定保健用食品(トクホ)などで定まっている項目については、表示と関連が深い評価項目はおのずと1つに絞られることになるため迷うことは少ない。一方で、トクホにないヘルスクレームについては自由度が高い。

 機能性表示食品ではアイケア、認知機能、睡眠など生活習慣病以外の分野のヘルスクレームも表示できるため、評価項目を工夫すれば表示に生かすことができる。自由度が高い評価項目であるが、評価項目の妥当性については、十分に検討する必要がある。「睡眠」に関して1つ例を挙げる。睡眠の評価は、主観評価、睡眠脳波などさまざまな評価方法がある。特に、起床時における眠気などは、OSA睡眠調査票といった、妥当性を確認している質問紙が存在する。
このように、特定の分野では、評価で用いる質問紙など主観評価項目や測定指標などは、疾患判定のガイドラインなどで定められている評価方法や査読付き論文、先行研究論文などで妥当性を評価している方法を用いた方が良い。

 評価方法の妥当性とは、一般に幅広い集団で質問紙や評価項目について試験を実施し、試験結果の分布を確認することや従前から用いられている似た評価項目も同時に実施して、新しい評価方法との相関を取るなど、使用した実績について確認することを指す。バリデーションとも述べられる。

 特に注意すべき点としては、外国語論文など、日本語以外の言語で評価されている質問紙を日本語に訳して用いる場合は、原版で書かれた内容から若干の言語の揺れが生じる。そのため、日本語版の質問紙を日本人の集団で評価し、原版で評価した場合との比較を行うなどの考慮が必要になってくる。疾病のガイドラインで定められている質問紙による評価では、原版が英語である質問紙などが日本語に訳され、日本語版で訳されている例が比較的多い。 

このように、質問紙の妥当性は、言語間の揺れなども考慮し選択する必要がある。なお、主観評価で用いるVAS法は、10cmの線分で、両端に相反する項目を設定する手法として一般化されており、主観評価の手法としては自由度の高い評価方法だ。しかし、VASにおいても、両端に記載する項目は、本当に相反する内容となっているかは、十分検討が必要である。

(つづく)

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<プロフィール>
2000年、近畿大学農学部農芸化学科卒。
2005年、近畿大学大学院農学研究科応用生命化学専攻、博士後期課程満期退学。
2005年、博士(農学)取得。近畿大学農学部研究員、化粧品評価会社勤務、食品CRO勤務を経て、2016年から関西福祉科学大学健康福祉学部福祉栄養学科。
専門は、農芸化学分野を中心に分析化学、食品科学、生物統計学と物質の研究から、細胞、動物試験、ヒト臨床試験まで多岐に渡る研究歴がある。特に食品・医薬品の臨床研究は、大学院在籍時より携わった。機能性表示食品制度発足時から、研究レビューの作成およびヒト臨床試験など多くの食品の機能性研究・開発に関わる。
2023年1月、WNGが発信する会員向けメルマガ『ウェルネス・ウィークリー・レポート』やニュースサイト『ウェルネスデイリーニュース』で連載した「エビデンスの基礎知識」が100号に達したのを記念し、内容を改めて編集し直し、「開発担当者のための『機能性表示食品』届出ガイド」を執筆・刊行。

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