消費者庁、サプリのステマを初認定 措置命令を大正製薬に下す、「真摯に受け止める」と同社
サプリメントの広告宣伝でステルスマーケティング(ステマ)を行っていたとして、消費者庁は13日、大手の大正製薬㈱(東京都豊島区、上原茂社長)に対し、景品表示法に基づき再発防止などを命じる措置命令を行い、発表した。
消費者が事業者の広告であることを判別するのが困難なステマを不当表示として規制する同法に基づく法令(ステマ告示)が昨年10月施行されて以降、違反認定は3例目。サプリメントでは初となる。大正製薬は同庁の発表に合わせ、命令を「真摯に受け止め、再発防止に努める」などとするコメントをホームページに掲載した。
インフルエンサー投稿を抜粋して広告、「PR」と明記せず
消費者庁の発表によれば、大正製薬は昨年3月に発売したサプリメント『NMN taisho』に関するSNSへの投稿を広告代理店経由でインフルエンサー3人に依頼。投稿内容に関する条件を付けた他、1カ月分で定価3万円超の同商品を無償提供。また、広告代理店経由で1万円前後の報酬を支払っていた。投稿依頼内容は、「♯NMN」、「♯NMNtaisho」などと記載することのほか、店頭では購入できないこと、個包装だから携帯しやすく清潔であること──などだった。
投稿依頼を受けたインフルエンサーたちは依頼内容に基づき「1日目安3粒ずつの個包装になっているので衛生的でとても便利!」、「原料から製造まで徹底管理されてる国内製造!」、「いくつになっても自分らしく、『今が最高』と思える活き活きとした日々を過ごしていきたいですね!」などと投稿。その上で同社は今年4~5月、自社ECサイト「大正製薬ダイレクトオンラインショップ」に、インフルエンサーの投稿内容を一部抜粋しつつ、「Instagramで注目度上昇中」、「品質にこだわりたい方には特許処方の『NMN taisho』」などと掲載。その際、「PR」などの表記を行っていなかったという。
消費者庁は今回、インフルエンサーの投稿自体はステマと認定していない。投稿に「PR」などの表記があったという。大正製薬も、「♯PR」を含む投稿を行うよう広告代理店を通じて求めていた。同社によれば、インフルエンサーがSNSへ投稿したのは昨年6月だったという。
大正製薬は、ECサイトに掲載した投稿内容の一部抜粋に、消費者が広告であることを明瞭に判別できる記載を行わなかったことについて、「自社ウェブサイト上に表示しているものであることから、一般生活者においては、インフルエンサーの投稿部分についても当社の広告であることが判別できると考えた」などとホームページで説明。今後、「従業員に対し研修を実施し、また広告掲載前の社内確認を徹底する等の広告管理体制をより一層強化し、再発防止に努める」としている。
ステマを規制する消費者庁表示対策課は、「自社ウェブサイトであれば、SNS上のインフルエンサーの投稿を自由に抜粋しても問題ないということはない。事業者の表示であるならば、それが明らかなかたちで表示されているか確認してもらいたい」と業界に対して注意喚起している。
【石川太郎】
(冒頭の写真:消費者庁がステマを認定した大正製薬が行っていた表示物の例。同庁が用意した物撮り用パネルを撮影)
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