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エビデンス入門(74) 機能性関与成分同士の相互作用評価

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科 准教授 竹田 竜嗣
       
 機能性表示食品では、複数の機能性の表示も可能である。1つの表示は研究レビュー、もう1つの表示は最終製品による臨床試験での届出など、研究レビューと臨床試験を組み合わせた表示も可能である。最近は、1つの商品で2つの機能や3つの機能を持つ複合表示の機能性表示食品も増えてきている。

 複合表示の機能性表示食品においては、機能性関与成分が1つで表示が複数あるものと、表示ごとに異なる機能性関与成分を含んでいるものがある。前者の代表例はGABAであり、現在、血圧低下や作業による一時的な疲労感の低減、睡眠の質改善など多様な機能性表示文言の組み合わせによって表示されている。GABAの場合は、それぞれの機能で機能性の根拠論文が異なり、それぞれの最低摂取量も異なる。機能性表示食品は、機能性関与成分については下限保証となっているので、複数の機能性をうたう場合、一番多い根拠量に合わせることで複数の機能性表示が可能になる。GABAだけでなく、他にも複数のエビデンスが存在する機能性関与成分がいくつかある。また、機能性関与成分を複数組み合わせ、複数の機能性を表示することも可能であるが、届出書類に「機能性関与成分同士の相互作用評価」が必要になってくる。機能性関与成分同士の相互作用評価は大変難しい。

 1つの調べ方としては、各機能性関与成分が医薬品との相互作用を起こさないかを調べた際に、医薬品の相互作用のメカニズムも調べる。競合や阻害するメカニズムが分かることで、他に含まれる機能性関与成分も同様に医薬品と相互作用を起こさないか、あるいは作用機序の観点から競合しないか、阻害しないかを確認する作業になる。その際に役立つのが2次情報データベースだが、医薬品と異なり食品成分との相互作用は情報が少ない。

 いわゆる「食べ合わせなどの相性」で調べる方法もあるが、サプリメントタイプの加工食品では、機能性関与成分を通常の食材から摂取する量よりも多い場合がほとんどであり、注意が必要である。ま た、他にも同じ機能やよく似た機能を持つ機能性関与成分の組み合わせでないかもチェックポイントとしては重要だ。

 しかしながら、ほとんどのケースでは情報が無いことが多い。情報が無ければ安全ではなく、これまでに報告されていないケースがほとんどだ。最終製品で長期の安全性試験や過剰摂取試験を行うことで安全性を確認する方法もあるが、安全性試験の実施も動物試験などでまずデータを得るなど、ヒトでの実施には慎重になる必要がある。

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<プロフィール>
2000年、近畿大学農学部農芸化学科卒。
2005年、近畿大学大学院農学研究科応用生命化学専攻、博士後期課程満期退学。
2005年、博士(農学)取得。近畿大学農学部研究員、化粧品評価会社勤務、食品CRO勤務を経て、2016年から関西福祉科学大学健康福祉学部福祉栄養学科。
専門は、農芸化学分野を中心に分析化学、食品科学、生物統計学と物質の研究から、細胞、動物試験、ヒト臨床試験まで多岐に渡る研究歴がある。特に食品・医薬品の臨床研究は、大学院在籍時より携わった。機能性表示食品制度発足時から、研究レビューの作成およびヒト臨床試験など多くの食品の機能性研究・開発に関わる。
2023年1月、WNGが発信する会員向けメルマガ『ウェルネス・ウィークリー・レポート』やニュースサイト『ウェルネスデイリーニュース』で連載した「エビデンスの基礎知識」が100号に達したのを記念し、内容を改めて編集し直し、「開発担当者のための『機能性表示食品』届出ガイド」を執筆・刊行。

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