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グリホサート評価巡る不正追及 元ロイター記者、AGRIセミナーで科学的交流の重要性強調

 ㈱農業技術通信社(東京都新宿区、 昆吉則社長)「AGRI FACT」編集部は22日、「特別セミナー グリホサート評価を巡るIARC(国連・国際がん研究機関)の不正問題~ジャンク研究と科学的誤報への対処法~」を都内で開催した。

 食品安全情報ネットワーク(FSIN)、食の信頼向上をめざす会との共催で、Zoomによるオンラインとのハイブリッドで開催。会場と合わせて約350人が参加した。

 特別講演として、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)首席科学ライターで元・ロイター通信記者のケイト・ケランド氏が、「ジャンク研究を論破し、誤情報を暴く。誠実で正確な科学コミュニケーションの重要性」と題して講演した。

IARC研究者の不正を指摘

 WHOの下部組織であるIARC(国際がん研究機関)は、除草剤「グリホサート」(商品名=ラウンドアップ)」に「おそらく発がん性がある」と評価。その評価をめぐり同氏は、ロイター通信の記者時代にIARCの研究者の不正があったこと、IARCが科学的根拠を無視した発がん性評価をしていたことを明らかにし、欧米でのラウンドアップ訴訟やグリホサート承認に影響を及ぼした。

 グリホサートの評価をめぐるIARCの不正・腐敗を明らかにした同氏の調査報道は、「外国報道協会年間最優秀科学記事賞」(2017年)、「ロイター企業報道年間最優秀記事賞」(2018年)を受賞している。また今年7月19日、「第8回食の新潟国際賞大賞」(主催:(公財)食の新潟国際賞財団)に輝いた。今回、その授与式に合わせて来日したという。

 同氏は、科学コミュニケーションの重要性について講演した。科学と健康の分野において、誤った情報の発信とコミュニケーション不足が社会に混乱をもたらす可能性があると強く主張している。

 「IARCの評価では、グリホサートはがんを引き起こさないという重要な未発表データが無視された。科学コミュニケーションは、あくまでも完全に事実に基づくものであって、説得力を持たせるためにフィクションの要素を含めてはいけない」と話した。
 また、科学的事実に基づいた情報発信を行うことの重要性について、「科学者や科学を伝えるメディアの責任が重要だ」と強調。また、日本の科学コミュニケーションの状況にも触れ、日本の研究者の間では、自分の研究を社会に伝えることに関心が高まっているという調査結果を引用した。

「アスパルテームの安全性は広く認知されている」(唐木氏)

 基調解説として東京大学名誉教授で食の信頼向上をめざす会代表の唐木英明氏が、「IARCグリホサート・アスパルテームの不正評価問題」と題して講演。唐木氏は、「IARCは、発がんの可能性に関する研究をまとめる機関であり、その評価は理論的可能性に基づくものであって、現実の生活における発がんの実態は考慮していない」と説明。その上で、「アスパルテームの発がん性について、ある偏った実験に基づく論文を根拠にグループ分けを実施、『ヒトに対して発がん性がある可能性がある』グループ2Bに分類した。しかし、アスパルテームの安全性は広く認知されており、その評価は、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)とも異なる」と話した。

 グリホサート(ラウンドアップ)についても唐木氏は、「世界中の食品安全機関がその安全性を認めており、多くの毒性学者もIARCだけがおかしな判定をしていると批判している。また、世界一安全で優秀な除草剤であるラウンドアップを悪者にしているその背景は、ラウンドアップ耐性遺伝子組み換え作物を使用できなくすることにある。ラウンドアップは、アメリカの環境団体や法律事務所のビジネスの犠牲になった」と説明。その上で、「科学は嘘をつかないが、科学者は時に嘘をつく。その科学者の嘘に立ち向かうケランド氏のような科学コミュニケーターの仕事は重要」と話した。

※グリホサート:除草剤「ラウンドアップ」の主成分で、アミノ酸系の除草剤

【藤田 勇一】

(冒頭の写真:講演したケイト・ケランドし氏、下の写真:唐木英明氏(右)を交え質疑応答&ディスカッションを実施)

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