本格的な中華料理用調味料を国産化 50周年のユウキ食品、世界各国の調味料・食材へ拡大
ユウキ食品㈱(田中秀和社長)は1974年創業。今年、創業50周年を迎えた。社名は有機農業の有機に由来し、健康で安心して使える食品の提供を意識してのスタートだった。ニーズがありながら供給者不在だった中華調味料から事業展開を開始し、業務用で伸ばした後、ラインアップの充実で小売向けでも成功。アイテム増加に合わせて、商品規格書を電子化し、意志決定プロセスも刷新するなど、社内の仕組みも改革しながら、売上高200億円を目指している。
市場の声に応える商品開発、オリジナリティで価格競争を回避
同社の創業者、田中晃氏は中埜酢店(現在のミツカングループ本社の創業企業)と西ドイツの食品会社での勤務を経て、1974年に有紀食品(当時。2003年にユウキ食品に社名変更)を設立した。社名ユウキのキは機ではなく紀だが、有機農業の「有機」を念頭においた命名で、「安心」、「本質」、「健康」を考えた商品を目指したという。
創業期の事業として中華料理の調味料を選んだのには、大きく2つの理由があった。まず、中華料理は中国だけでなく、欧米を含む世界中で食べられており、拡大と安定が期待できた。一方、当時の日本では本格的な中華料理に必要な調味料が手に入りにくいという事情があった。そこに商機を見出したのである。
その中でも、初期の主力商品で「中華食材のユウキ」のイメージを決定づけたものが「四川豆板醤」だった。実は、この商品の最大の特徴は味もさることながら色だった。
豆板醤は唐辛子とソラマメ、および食塩などを主原料にいくつかの工程を経て漬け込んで作るが、熟成が進むにつれて味がまろやかになって高値が付く一方、色はこげ茶色になる。しかし、日本で四川料理を提供する料理人からは「色鮮やかな豆板醤がほしい」という声があり、それに応えるかたちで調製したものだった。この時、市場の要望に応えるかたちで商品を開発することで支持を勝ち取るという成功体験が生まれたと言える。
また、市場に似たものがある一般的な商品では価格競争に陥る可能性があるところ、同社はオリジナリティを重視することでそれを避ける考え方を持つという。本場中国とは異なるタイプの豆板醤の成功は、この考え方の原点でもあるだろう。
充実したラインアップが強み、安全・安心に応える仕組みも整備
その後、同社は調味料やガラスープなどその他の食材のアイテムを増やしながら、業務用食材だけでなく家庭向けでも成功していった。72年の日中国交正常化と78年の日中平和友好条約締結により、本格的な中華料理への興味・関心が高まったことも追い風となった。
この頃、中華の調味料の単品を製造するメーカーは他にもあったが、基礎調味料を網羅的にラインアップしているメーカーは少なかった。それに対して、すでに充実した品揃えを持っていた同社は、スーパーなど小売店から重宝された。
2006年にはライオンマコーミック社から事業譲渡を受け、07年からマコーミック製品の販売を開始し、調味料を総合的に扱う企業へと大きく飛躍することになった。現在のアイテム数は約1,200で、ジャンルも中華、韓国、洋、各種エスニックと多岐にわたる。
だが一方、その07年の年末から翌年初めにかけて発生した中国製冷凍餃子中毒事件は、同社には直接関係のない事件でありながら、同社が食の安全・安心について体制を再整備するきっかけとなった。
折からアイテムが大きく増えたなか、各商品の安全性、アレルギー物質、原産地などについての問い合わせも急増した。これには商品規格書を見ながら対応するが、この文書作成と管理に課題があることが分かった。それぞれが異なる担当者による手作りで、記載項目や書式もばらばらで、しかも紙で管理していたため、保管、検索も大変だった。そこで商品規格書のフォームを統一し、紙ではなく電子化して管理する体制に移行した。
売上高200億円に向けて、ブランドの確立と認知拡大進める
現社長の田中秀和氏は89年に同社に⼊社し、2012年に社長に就任した。大きな槽で四川豆板醤を黙々と仕込む田中晃氏の背中を見て育った息子だが、ゼロから商品と会社を生み出した父に対して、1だったものを3へ4へと大きくすることを得意とするという。入社後は各地に営業所を立ち上げるなど営業力の強化に努め、本社異動後には意思決定プロセスを改めるなど、機動力を高める改革を行ってきた。
19年に売上高100億円を達成。オリジナリティのある開発力を磨きながら、企業のブランドイメージの確立と全国的な認知度アップを行いながら、次の目標である売上高200億円達成へ邁進する。
【齋藤訓之】
COMPANY INFORMATION
所在地:東京都調布市富士見町1-2-2
TEL:042-442-0801
URL:https://youki.co.jp/
事業内容:調味料、食材の製造・販売