15周年のプレミアアンチエイジング 代表取締役社長、松浦清氏に聞く
化粧品ブランド「DUO」を自社通販サイトを中心に展開し、短期間にシェアを伸ばしたプレミアアンチエイジング㈱は、2024年12月に会社設立15周年を迎える。近年は業績の伸び悩みも見られるが、新ブランドの開発、M&Aによる新分野への進出、海外展開も行い、「日本を代表するアンチエイジングカンパニー」を目指す姿勢を緩めない。代表取締役社長の松浦清氏(=写真)に話を聞いた。
通信販売を主戦場に、強い化粧品ブランドを構築
——貴社は通信販売を軸に短期間に強い化粧品ブランドを育てました。設立初期の成功の秘訣はどのようだったでしょうか。
松浦 私自身は会社勤務と起業・企業経営の両方を経験しており、それらで携わった仕事から、ブランドの構築・展開を得意としてきました。また、当社設立の前年の2008年にはリーマンショックがありましたが、当時は大手テレビ通販会社に勤めており、リーマンショックの真っ只中でもテレビ通販は活況が続いていました。通販市場の将来性、拡大を確信し、これまでの私の経験をさらに生かそうと考えて、09年に会社を設立しました。
設立に向けて、何を売るかを考える中で選んだのが「アンチエイジング」です。その頃、この言葉が社会に広がり始めていましたし、私も40歳になる年で、自分自身のこととしても関心を持ち始めていました。
——アンチエイジングにもさまざまなアプローチがありますが、最初に化粧品を選んだのはなぜでしょう。
松浦 まず、比較的高い頻度でリピートしていただけるものを扱おうと考えました。しかも、ゼロから会社を興し事業を始めたので、小資本のスタートで効果的に取り組めるものとして、化粧品をOEMで生産してもらうかたちを選びました。
次に、何をテーマに商品を作るかを考えた時に注目したのが、「自然」と「科学」です。
その頃、化粧品では「自然由来」、「オーガニック」、「ナチュラル」といったキーワードが注目を集めていました。一方、「ドクターズコスメ」といった言葉も注目されていました。一般に、自然・ナチュラルと科学・テクノロジーは相反するもののように捉えられがちですが、この両方の良さを融合させる意味で「DUO」というブランドに決めました。
——最初のヒットはクレンジングバームでした。その当時は珍しかった、バームタイプを選ばれたのはなぜでしょう。
松浦 従来、また現在もそうですが、クレンジングはオイル系が一般的です。ただ、オイル系のクレンジングはよく落ちる一方、肌に必要な油分まで取り除いてしまう使用感にものたりなさがある消費者もいます。
そこで肌への負担を抑えながらメイクをしっかり落とす解決策として、常温では固形で体温では溶けるバームという形を採用しました。
ただ実際、このバームタイプのクレンジングは当時あまりなく、注目もされていませんでした。原因の1つとして、使うのが面倒とみられていることが考えられました。手に取ってすぐに伸ばせるオイル系に比べると、バームはスパチュラで手に取って肌の上で溶かしながら広げるという一手間が必要なためです。
そこで私たちは、「1日のご褒美にクレンジングバームでマッサージを」という提案によって、この一手間を前向きなイメージで訴求しました。すると、従来注目されていなかったことが、逆に強みに変わったのです。というのも、ブログや今日のSNSでは、珍しさや目新しさが話題になるからです。そこから、ブロガーの方たち、今でいうインフルエンサーの方たちの目に止まりました。バームの商品の良さや特徴を評価され、大いに紹介していただきました。
その結果、半年も経たないぐらいで人気商品となり、1年後には@cosmeで部門1位(2010年11月/@コスメ「その他クレンジング部門」)も獲得することができました。
変化を遂げた通販市場、ネットがより身近な存在に
——2010年代には、通信販売全体、とくにネット通販も大きな変化を遂げたと聞きます。
松浦 かつてネットにつながるデバイスがパソコンかガラケーだった時代には、Eコマースは売上高10億円が限界と言われていましたが、スマートフォンが普及するにつれて、状況は変わりました。とくに2012~13年にかけて、スマートフォンで買物をする習慣が広がってきました。
それが「DUO」ブランドが誕生して3年ぐらいの時期ですが、当社ではこれを受けて広告出稿をスマートフォン向けにシフトした結果、10億円という天井を突破し、18年には売上高50億円が射程に入りました。
大きな転機を迎えていることを感じ、そして、成長の一方で突破すべき課題も見えてきました。「DUO」は売上げを上げる一方で、データを見ると一般の認知が低かったのです。通信販売で成長したブランドの特性として、必要な人たちには知られていながら認知が一般に広がりにくいということがあります。
もちろん、マスマーケットへの広がりを念頭に、当社はバラエティショップ等の店頭での展開も比較的早くから始めていて、その実績も少しずつ出ていましたが、むしろ、認知を大きく広げてブレイクさせることが必要な段階が来ていたのです。
——そこで打ったのが、KinKi KidsのテレビCMだったのですね。
松浦 「DUO」に合わせて、デュオユニットを起用しました。女性用の化粧品に男性アイドル起用は珍しいとも言われますが、KinKi Kidsの主要なファンは女性です。
結果的に、このテレビCMは大成功でした。18年9月にスタートして、その年度の「下期CM好感度ランキング」(CM総合研究所)の化粧品業類で1位を獲得し、消費者にはもちろん、広告業界でも、化粧品業界でも、たいへん注目されました。それに合わせてネット広告も増やしました。
その結果、19年7月期には、売上高は119億円と倍増しました。
——2019年からは、新しいブランドも次々に立ち上げています。
松浦 2019年に「大人のエイジングケアブランド」として、「CANADEL」をリリースしました。また、22年以降にはヘアケアの「clayence」、メンズの「DUO MEN」、スキンケアの「Reinca」、「C+mania」、サプリの「SINTO」とマルチブランド戦略を進めています。
——一方、売上高は22年7月期の339億1,100万円から、24年7月期の203億5,900万円と下げています。売上減少への対応と、将来へ向けた展望をお聞かせください。
松浦 「DUO」は一時は市場の約3割に迫るブランドに成長しました。しかし、この大ヒットを受けて類似品も出て来て、こうした類似品等へのシフトも見られます。そして、当社だけのことではない問題として、DtoC市場全体が踊り場を迎えているとも見ています。類似品と価格訴求があふれ、その結果、消費者の購買行動も変化してきています。インターネット広告の競争も激しくなってきていて、新規獲得も容易ではなくなってきています。
当社としては、そうした流れにのまれない独自の動きを強化していきます。何より当社の強みとして、会員390万人という基盤があります。この方たちに、丁寧に提案を続けていく。また一方、店舗での販売も伸びています。そこで、通販と実店舗とそれぞれに最適なマーケティング、商品戦略を行っていくことで、引き続き売上増を狙っていきます。
海外戦略も強化していきます。今年7月には、「DUO」のクレンジングバームを「DUO PREMIER」として、香港、中国、台湾等に店舗網を持つアジア最大のドラッグストアチェーン「ワトソンズ」の中国本土売上上位1,000店舗で販売をスタートしました。
——化粧品とサプリ以外の新しい分野への挑戦も始まっています。
松浦 23年にリカバリーウェアの㈱ベネクスがグループに加わりました。同社製品は、眠っている間など休養時の疲労回復をサポートするというもので、これは成長カテゴリーとして注力していきます。
一方、事業では今後も新しい話題を提供していきますが、話題性を追い始めるとブランドの寿命は短くなります。息の長いブランドへ向けて、ブランドを適切に管理する地道な活動も行っていきます。
当社は、日本を代表するアンチエイジングカンパニーになるというビジョンを設立時から掲げてきましたが、社会のアンチエイジングへの関心も、当時からさらに強まっています。市場のニーズが高まる趨勢の中、当社は今後も美容家、医師などのプロフェッショナルとのつながりも大切にしながら、アンチエイジングに関する商品・サービスを総合的に揃えていきます。
【齋藤訓之】
COMPANY INFORMATION
所在地:東京都港区虎ノ門2-6-1
TEL:03-3502-2020
URL:https://www.p-antiaging.co.jp/
事業内容:化粧品・健康食品及びリカバリーウェアの企画、開発、輸出入、通信販売、卸及び小売業務