健康被害問題、関連損失100億円超に 小林製薬、新たに22億円余を計上
小林製薬㈱(大阪市中央区、山根聡社長)は、同社製の原材料を配合して販売したサプリメント『紅麹コレステヘルプ』の健康被害問題をめぐり、補償や、主にBtoB(対事業者)間の製品回収などにかかる費用として新たに22億円余りの特別損失を計上した。これで一連の問題による特損は累計101億円になった。被害規模など問題の全容は解明されていない。「現時点で合理的に金額を見積もることが困難」と同社は説明しており、今後、特損をさらに積み増す可能性があるという。8日午後、2024年12月期第3四半期(7~9月)決算を発表するのに合わせて公表した。
同社の発表によれば、同社が販売した『紅麹コレステヘルプ』の摂取との関連を否定できない死亡事例は今月3日時点で125例に上る。そのうち43例は、調査の結果、摂取との明確な因果関係は確認されなかったという。一方、125例のうち72例は「詳細調査の同意が取得できない等のため調査が困難」。現在、10例について因果関係調査を続けている。
被害を受けた消費者への補償対応は8月から本格的に始めた。今月3日時点で入院、通院による補償申請は約650件あり、そのうち約250件について判定を終えているという。だが、補償金の支払いを決めた件数は明らかにしなかった。
『紅麹コレステヘルプ』に生じた健康被害問題では、同サプリを摂取した国内の40代男性が7月、同社に損害賠償を求めて提訴。問題は海外まで波及しており、9月、健康被害の賠償を求める集団訴訟が台湾で起こされたと報じられた。日本でも10月、健康被害を訴える消費者を支援する弁護団が大阪で結成された。
第3四半期ヘルスケア売上高、約20%減の132億円
2024年12月期第3四半期の売上高は前年同期比9.2%減の413億円だった。国内事業の売上高は同12.5%減の287億円。健康被害問題でサプリメントなど食品カテゴリが「苦戦」したためヘルスケアの売上高は同19.7%減の132億円と2割近く減少したという。定期購入の解約の影響を受けている通販も同47.8%減の9億円と大幅に落ち込んだ。
24年1~9月期の連結売上高は同3.9%減の1,144億円となった。国内事業連結売上高は同7.9%減の834億円。そのうちヘルスケアは同9.2%減の431億円、通販は同34.9%減の36億円だった。国内事業は日用品を除き減収したが、訪日客が増加していることもあり、インバウンド売上に関しては前期比23億円増加した。インバウンド売上高のトップ3商材は、『ナイシトール』、『命の母』に続いてサプリメントなど「栄養補助食品」の順だったという。
1~9月期の当期純利益は同65.5%減の53億円だった。1~12月通期の純利益見通しは、8月に公表した従来予想121億円を下方修正し、107億円に引き下げた。売上高見通しは1,690億円を維持。
【石川太郎】
(冒頭の写真:紅麹原材料を製造していた小林製薬の旧大阪工場)
関連記事:JADMA、会員の小林製薬を処分 除名に次いで重い「改善勧告」
:小林製薬執行役ら報酬一部受取り辞退 健康被害問題、経営責任「重く受け止め」
:小林製薬、損害賠償求められる 国内男性、PL法上の欠陥など主張か