オートファジー、その将来性を探る 活性化させるサプリ、市場創出の可能性あるか
Autophagy(オートファジー)。日本語にすると「自食作用」などと訳される。耳にしたことはあっても「一体なんのことやら」である人が一般的だろう。だが、サプリメントなどヘルスケア産業やその界隈では認知されていて、健康寿命延伸と産業拡大に向けた新たな切り口になると期待する声もある。日本が世界をけん引していると言われるオートファジー研究の成果を実装させたサプリメント市場形成の可能性を探る。
細胞の「健康」を維持する仕組み
活性化。オートファジーが語られる際、よく出てくる言葉の1つだ。オートファジーを活性化させることで健康寿命を延伸できる可能性がある──そんなふうに語られることが多い。そのようにヘルスケアの中でも「アンチエイジング」、最近だと「ウェルエイジング」、海外では「セノリティクス(senolytics)」などとも表現される「老化抑制」の文脈でもっぱら言及されるのがオートファジー。では、オートファジーを活性化させることと、健康寿命延伸や老化抑制がどう結びつくのか。
オートファジーとは、細胞の中で起きている現象、あるいは細胞が持つ仕組みのことを言う。かなり大雑把に説明すると、細胞の中で発生して細胞内の物質を回収、分解、そして「リサイクル」することで細胞内の状態を正常に保つ。それがオートファジーだ。
細胞は生命の基本単位。細胞の機能に支障が生じると、細胞が死んでしまったり、細胞が作る組織や器官に支障が出たり、疾患につながったりする。短期間のうちに入れ替わる細胞であればさほど問題にはならないのだろうが、脳の神経細胞など、そうでない細胞が問題になる。
そうならないよう、細胞内をリサイクルすることで(細胞の中身を作り替えることで)細胞のいわば「健康」(恒常性)を保つ、つまり人の健康を司る細胞をケアする仕組みがオートファジーだ。線虫やマウスなどを使った実験で、オートファジーは加齢とともに低下したり、オートファジーが働かないとカロリー制限などの寿命延長経路が機能しなかったりすることも分かっているという。だから「活性化」とセットで語られることが多い。
積極的な介入によってオートファジーの低下を抑える、あるいはその機能を活性化させる。そういったことは不可能ではないと考えられている。
オートファジーの機能を低下させる「LC3」というタンパク質が発見されていて、その働きを阻害する医薬品の開発が進められている。
他方、治療ではなく予防をめざすヘルスケアの分野では、オートファジーを活性化させる働き(機能性)を持つ成分を、食品などに用いられる天然物から見つけ出し、サプリメントなどとして製品化して生活者に提案する動きが進んでいる。それが最も進んでいるのは、おそらく日本だ。
日本がけん引するライフサイエンス
オートファジーの仕組みを解明したのは日本の分子細胞生物学者、大隅良典博士である……。
(続きは会員のみお読みいただけます。残り約2,200文字。続きは「会員ページ」の「月刊誌閲覧」内「Wellness Monthly Report」2024年9月号(75号)の特集「オートファジー、その将来性を探る」から)