2020年海外サプリメント市場を総括!~21年のトレンドは?(後)
英国の市場調査会社「FMCG Gurus社」は、ダイエタリーサプリメント、機能性食品・飲料に関して行った消費者調査をもとに、浮上しそうな2021年のトレンドを予測した。その主なものを以下に紹介する。COVID-19の影響を受け、消費者の意識や態度がどう変わったか、この先、どう変わっていくかを分析した。
<予防医学的アプローチ>
心身の健康問題は「起こる前に予防する」という考え方が消費者の間で増えている。特に、COVID-19パンデミック以降、消費者の79%が「健康的な食品・飲料を摂取したい」と答えている。体の症状や認知問題に悩む消費者も多く、「できるだけ長く健康でいたい」、「治療にも増して予防が大切」という声が増えてきた。健康的ではない食品や成分をできるだけ避け、あるいは減らしていこうとする傾向が強まっている。消費者は、COVID-19による強いストレスの解消を食品や飲料に求めたが、「そろそろ変化が必要」とも感じている。
<安全で安心>
リスク回避という考え方は2021年も続くと、FMCG Gurus社は見ている。「健康」や「身の安全」に対する懸念以上に「経済」への懸念が増している。この2年ほど続いていた景気後退はCOVID-19により増幅した。消費者の半数以上は経済的な危機感を感じ、食品・飲料への出費を減らしたいと考える。ブランド志向も減少してきた。このトレンドを押し上げる要素として、「母国生産」・「地元主体」商品の購買意欲を挙げている。50%の消費者は商品の原産国に関する情報を重要視する。地元原産の商品は「ヘルシー」「サステナブル」という考え方と結びつく。また、商品包装への意識・態度を見直そうとしているという。包装の見直しは、食品の安全性や環境への配慮にも関連する。
<「健康」の再発見>
疾患の罹りやすさや回復力といった健康の基本を意識する消費者が増えてきた。19年の時点で、「自分の免疫の健康に満足している」と回答した消費者は54%たったが、20年には49%に減っている。免疫の健康を維持する目的で人気のある商品は、オメガ3・ビタミンC・カルシウム・たんぱく質・プロバイオティクスだった。機能性食品への関心度も高まっている(90%)。また、44%が「砂糖摂取を減らす」ことに意識を向けている。
<植物の力>
20年、「ヘルシー」、「サステナブル」の観点と連携して植物性食品への注目度は高まり、来年もこの状態は続くことが予測される。今後は、肉や乳製品の代替商品の味、食感が植物性食品の成長の重要なカギとなるだろう。「乳製品を控えたい」(41%)としているが、35%は「植物性食品の味は味気ない、つまらない」のではないかという懸念を依然として抱いている。調査回答者の26%は、自分自身を「フレキシタリアン」だと認めており、植物性食品を愛用する割合は増えている。それでも、「代替商品が肉商品や乳製品に劣らずにおいしい」ことが重要である点を強調した(67%)。
<新しい味、食感がカギ>
消費者が食品・飲料を選ぶ際の重要なカギは「味、風味」である。目新しさを探している、冒険したいと思っている消費者の関心を引く要因となるだろう。54%は、「新しい」、「味わったことのない」風味を好み、同じ割合が「冒険したい」と答えている。そうした「実験的試み」を好む消費者は、異国の風味、世界の飲み物を試したいと考える。「食感」も同様で、53%が目新しい食感を探している。ただ、30%の消費者は、「肉代替商品の食感に満足できるか心配」という理由で代替品を避けており、22%が同じような懸念を植物性スナックの食感に向けている。
<環境への意識>
環境意識が高まるなか、「サステナブル」という言葉が浸透し、さらに商品生産の透明性への期待も膨らむ。74%が環境の状態を憂慮しており、53%が「環境にダメージを与えると、取り返しのつかないことになる」と回答した。特に、今の不確実な時代における「透明性」は消費者の関心を引く重要な要素で、25%は「消費者がブランドに向ける信頼は、この2年で低下している」と感じている。食品・飲料、サプリメント分野における環境的な懸念事項は、二酸化炭素排出(73%)がトップで、地球温暖化(71%)、プラスチック汚染(68%)、食品廃棄(67%)、森林破壊(62%)と続き、「環境保護のためブランドは一層努力すべき」と65%が回答している。
<テクノロジーを利用したパーソナライズドニュートリション>
テクノロジーが急速な進歩を遂げるにつれ、「パーソナライズドニュートリション」への意識が高まってきた。栄養補給は万人一律ではなく、個人に特化した栄養の取り方、ライフスタイルの構築が重要という考え方だ。技術を利用して、自身の栄養状態を知り、専門家から自分に見合ったアドバイスを受けたいと思う消費者が増えている。「スマホのアプリやスマートウォッチなどの商品が魅力的」(62%)、「自分に必要な栄養を満たしてくれる商品が見つからない」(29%)といった回答が挙がっている。また、11%が「遺伝子診断を行った」と回答した。免疫の健康や健康的な加齢などの予防的アプローチを模索するため、遺伝子から将来の栄養状態を予測することを目的としている。ただ、こうしたビジネスには、倫理的問題や情報の安全確保などの課題が発生してくるだろう。
<家庭で楽しむレストラン料理>
COVID-19によりレストランを利用する外食の機会が極端に減ったが、その代わり、消費者はプロの手による料理を家庭で楽しむようになった。注文プロセスに関するテクノロジーの進歩で、新しい機会が提供される。「モービルアプリで出前を頼んだ」(84%)、また、44%は「COVID-19が終息しても、出前を取ることは続ける」と回答した。食品のオンラインショッピング利用が増えている一方で、その利用を躊躇する割合も多く、70%が「目で見て、手で触って買いたいから」という理由を挙げた。
(了)
<筆者プロフィール>
㈱グローバルニュートリショングループ 代表取締役 武田 猛 氏
麻布大学環境保健学部卒業、法政大学大学院経営学専攻修士課程修了。アピ㈱、サニーヘルス㈱を経て2004年1月、㈱グローバルニュートリショングループ設立、現在に至る。国内企業の新規事業の立ち上げ、新商品開発、マーケティング戦略立案などのコンサルティングや海外市場進出の支援、海外企業の日本市場参入の支援を行う。現在まで、国内外合わせて600以上のプロジェクトを実施。著書に「健康食品ビジネス大事典」(パブラボ社)など。