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2020年ヘルスケア産業界を総括~WNG座談会

 2020年は、東京オリンピックの開催年として期待値も高くスタートしたが、結局コロナウイルスに振り回された1年となった。飲食店やサービス業など大打撃を受けるなか、ヘルスケア産業界は比較的その影響は少なかったようだ。それでも状況が長引くにつれ、来年以降の今後を不安視する声も聞かれた。ウェルネスニュースグループでは、2020年のヘルスケア産業界を振り返る。

<ウィズコロナ時代の健康食品通販業界を総括>
 T コロナ禍で通販、特に健康食品を含む食品関連は業績を伸ばしたようだが、実際はどうなんだ?新規客の獲得状況や不正注文の問題などコロナによる影響は?
 F 新規客の獲得については、コロナ禍で伸びたという声が多く聞かれたよ。特にテレビCMの出稿が増えたことが要因となっているらしい。これまで、人気番組やゴールデンタイムの、比較的、視聴率が高い時間帯のCMは、大手企業がほとんどその枠を押さえており、スポットで枠が空いたとしても費用が高く、中小企業はとても手が出せない状況だったからね。
 緊急事態宣言やSTAY HOMEで、旅行会社やサービス業を中心とした大手企業の広告出稿がなくなり、その枠がお手頃な価格で回ってきたことで、効率よく予算が使えたようだ。
 また、消費者の在宅率の良さや健康意識がより一層高まったことも、健康食品を取り扱う通販会社にとっては追い風となったみたい。
 S 不正注文に関しては、コロナ以前から指摘されていたけど、転売サイトなどのCtoCビジネスが容易になったことで一気に拡大した。
 F コロナ禍で新しい注文が多く入ったことで、それに比例するかたちで新たな不正注文やその手口が増えているということは想像できる。特に中小規模の事業者では、1社単体でできることが限られているため、同業他社との連携、グループ内での連携などを図りながら対策を打っているようだ。コンサルタントからの助言や、専用のシステムを採用する事業者も増えている。

<原料メーカーや受託製造会社への影響が出始めている>
 T 原料メーカーや受託製造会社も、緊急事態宣言の発令当初はさほど影響もなく、不況に強い業界という印象を受けた。しかし、対面での商談や新規の営業ができないということから、少しずつその影響が出てきているようだが、今後の見通しはどうかな?
 F 特に通販事業者をメイン顧客に持っている事業者は、緊急事態宣言下も今も、堅調に業績を伸ばしているみたい。ただ、新たな顧客開拓や提案は思い通りにできておらず、コロナの影響が長期化することで今後を不安視する声は出始めている。
 また、中国を中心とした海外向けや、インバウンド需要が売上げの大半を占めていた事業者は影響が大きい。国内へのシフトチェンジや通販業界への新たなアプローチも模索しているようだね。
 S 悪い面だけではなく、良い面もあるよ。ある地方の受託製造企業によると、オンライン商談などを活用することで、地方にいることのデメリットが消え、効率良く提案ができたと話していた。確かに、営業だけでなく開発のスタッフもオンライン上で同席することで、スピードは驚くほど速くなってるよ。

<展示会やセミナーのオンライン化が急進>
 T オンライン商談と言えば、展示会も今年前半は全て中止になった。秋口に少しずつ再開したが、感染症対策や来場者数の問題もあり、まだ苦戦は続いているようだね。それでもセミナーは、オンラインを採用したことで、集客面はメリットが多かったように感じる。主催者や出展者の声は?
 F 展示会は9月になって、ようやく再開された。でも、思ったほど来場者数が伸びないということと、大手を中心に、会社の方針で出展を取り止めるなど、まだピーク時の半分程度の盛り上がりといった印象かな・・・来年も年明けから色んな展示会が予定されているけれど、状況次第では中止や延期もあるんじゃないか。
 S ある出展者によると、「来場者数は確かに少ないが、本気で探している来場者が多く、過去にないほどの商談数をこなし、その場で成約に至るケースも多かった」と話していた。
 F セミナーの方は、初めのうちは回線やシステム上のトラブルが多く、主催者側も参加者側も手探り状態だったみたい。特に、これまでは東京を中心に開催されていたため、参加がむずかしかった地域の事業者も参加が楽になった。
 T 主催者側にとっても新たなリードの獲得につながったことで、メリットは享受できたようだな。
 F ただ、少し慣れが出たことと、開催件数も増えているため、これからはいかに魅力的なテーマで開催できるかにかかっていると思う。
 S それにセミナー後の懇親会が開催できないから寂しいよ><
 T お前はそればかりだな!

<観光客減による打撃が大きかった沖縄>
 T コロナ禍で、沖縄など観光地の影響は甚大だったようだね。 
 F 特に沖縄は、国内外から年間で100万人も訪れていたため、影響は甚大。
 サービス業やお土産店などは業態の変更を余儀なくされた。実際、産直品やお土産品の通販に新規参入する観光農園などもあった。それでも、沖縄にある原料メーカーや受託製造企業の中には、「こういう時期だからこそ、リゾート感や健康などの沖縄らしさを求めた依頼が増えた。この流れをしっかりつかみたい」という声が聞かれた。沖縄色を前面に出した新たなブランドもあり、アイテム数も少しづつ増えてきている。差別化を図り販路を広げることで、観光に依存しないビジネスの展開が急がれている。
 S 早く沖縄に出張したいよ~(^▽^)/
 T おいおい。
 F そのためには、ブランドの認知力の向上も必要だけど、安定供給や大量生産などの課題も解決しなければならない。各事業者が一丸となって取り組む必要があるね。ぼくらも応援していきたい。

<臨床試験の食品CROはかつてない窮地に>
 T 緊急事態宣言の発令や3蜜回避など、臨床試験を請け負う食品CROにとっては大変な1年だったみたいだね。
 F 進めていた案件が全てストップなんてところも少なくなかったみたい。新規の提案も全くできず、これまで比較的順調に業績を伸ばしてきた食品CROも試練の前半だったみたい。
 それでも秋口から、止まっていた試験が再開。大手食品メーカーからの来年を見据えた新規依頼も入り始めたことで、前半の遅れは一気に取り戻せたようだよ。また、免疫を訴求した機能性表示食品の届出が公表されたこともインパクトが大きかったようで、新たな免疫関連の試験依頼が激増しているという。
 S コロナをきっかけに、これまでの来場型や大人数の試験だけでなく、企業の会議室などに医師と共に出向く訪問型や、少人数の試験、被験者在宅型の試験を提案するなど、新しいビジネスモデルも動き始めていると聞いたよ。

<機能性表示食品の届出公開ラッシュ!>
 T 免疫表示の影響は大きかったみたいだね。一気に業界が勢いづいた感じがする。
 S 機能性表示食品自体は3,500件を超える商品が受理された。
 T おいおい、WNGでは受理とは言わず、届出公表あるいは公開という表現を用いているよ。
 S そうだった。消費者庁の担当官も今では受理受理と言っているので、つい(笑)。
 F 特に12月は117件(28日現在)と公開ラッシュが続き、免疫表示以外でも新規の表示も相次いだね。医薬品リストに収載されている「γ-オリザノール」を機能性関与成分とした商品が公開されたのには驚いた。
 T あれは2018年、規制改革推進会議「医療・介護ワーキング・グループ」で医薬品リストに収載された成分の取り扱いについて、消費者庁と厚労省が協議している。そのときの議事録も残っているよ。その後、それを受けるかたちで、19年3月15日付で「『医薬品の範囲に関する基準』に関するQ&Aについて」とする通知を厚労省が出してるよ。
 S 「『専ら医薬品リスト』に収載されているものであっても、それが野菜・果物等の生鮮食料品に元から含有される成分である場合は、当該成分を含有している生鮮食料品の医薬品該当性について、当該成分を含有することのみを理由として医薬品に該当するとは判断せず、食経験、製品の表示・広告、その製品の販売の際の演術等を踏まえ総合的に判断する。
 また、当該生鮮食料品を調理・加工(伝統的発酵を含む。)して製造された食品(伝統的発酵によって当該成分が含有されることとなるものを含む。以下『加工食品』という。)についても、当該加工食品の製造工程において、当該成分の抽出、濃縮又は純化を目的とした加工をしておらず、かつ、食品由来でない当該成分を添加していない場合は、前段と同様の取扱いとする」か。なんか小難しい通知だな(;´Д`)
 T 通知なんていつだってそんなもんさ。難しい言葉でカモフラージュし、問題が起きた時のために、いろんな解釈の余地を行間に残していおきたいものなんだ。
 しかしこの届出、届出事業者は、機能性関与成分名は明らかにしているけれども表示には成分名を表記していないね。
 F それについては、医薬品医療機器等法に抵触する恐れもあるために表記しなかったのではないかな?
 T 今後、疑義の恐れもあるというわけか? 
 S 疑義と言えば、今では消費者庁のホームページから簡単に申し出ができるから、今後増える可能性もあるよね。
 T なんだか嬉しそうだな。
 S そんなことないけど、消費者庁はウェブサイトの「申出・問合せ窓口」から提出していいと言ってるよ。どこの会社がどうじゃなく、確信犯的に誤魔化しをやっている会社があるとすれば、叩き潰したほうがいいに決まってるし。
 F ぼくも同感。疑わしい届出にはどんどん疑義を出せばいいと思う。そもそも、機能性表示食品制度とはそういう制度で、取り下げること自体は不名誉なことではない。だからこそ事後チェック指針も策定された。
 T ただね、ぼくらの仕事は弱い者いじめじゃない。会社のなかには何も分からずに間違いを犯す会社もある。
 S 無知は罪っしょ!
 T それはそうかもしれないが、ただぼくらは、過ちに気付いた会社に対しては更生の手伝いもすべきじゃないかな? そうでないと結局、悪質事業者は地下にもぐって似たような会社が増殖するだけさ。

<「疾病リスク低減表示型トクホ」検討会スタート>
 T 12月に「特定保健用食品(トクホ)の疾病リスク低減表示検討会」がスタートした。
 F 公正競争規約も策定され、公正取引協議会も発足したね。
 T 機能性表示食品の勢いに押されどおしのトクホ業界が危機感を抱いたんだね。来年に向けて、疾病リスク表示がどこまで緩和されるのか、注目される。
 S トクホ対機能性表示食品か。なんだか武者震いがするね。
 F 馬鹿!業界のなかの小競り合いに興奮してどうする? 我々はあくまで、消費者のために商品がどう活用され、消費者の健康にどのように貢献していくのかを考えなければ。
 T そうだね。来年に向けて、しばし鋭気を養うとするか。

(了)

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