食薬区分改正案のパブコメに730件 コウトウスギの区分変更に反対の声 WG、再度審議も判断変えず
厚生労働省が25日までに通知した「食薬区分の成分本質(原材料)の取扱いの例示」(以下、食薬区分)の一部改正。改正に際して募集のあったパブリックコメントには、食薬区分の一部改正案をめぐるパブコメとしては異例の730件に上る意見が寄せられた。意見は、改正通知で専ら医薬品として使用される成分本質=専ら医=リストに組み込まれることになった、植物由来原材料のコウトウスギ(ウンナンコウトウスギ)に一極集中。これを受けて同省は、食薬区分を審議するワーキンググループ(WG)に再度審議を求めていた。
パブコメの募集終了から結果公示まで6カ月超
厚労省はパブコメの募集を4月21日に終了。それからパブコメ結果の公示と一部改正の通知までに、6カ月以上という異例の期間を要することになった。最近の食薬区分一部改正は、パブコメの募集終了後2カ月足らずで結果の公示、一部改正通知の公布まで進んでいた。コウトウスギの食薬区分を巡り寄せられた意見への対応に苦慮した様子が窺える。
食薬区分リストにおいてコウトウスギはもともと、名称「ハクトウスギ」、他名等「ウンナンコウトウスギ」、部位等「心材」、備考「樹皮・葉は『医』」として、医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)=非医=リストに収載されていた。それを今回の改正では、名称「コウトウスギ」、他名等「ウンナンコウトウスギ/Taxuswallichiana/Taxusyunnanensis」、部位等「樹皮・葉・心材」に改め、医薬品医療機器等法で規制する専ら医リストに追加することにした。
そうするのが妥当だと、薬学などの専門家で構成されるWGが判断したためだ。WGは、ハクトウスギはウンナンコウトウスギとは属の異なる別の植物であること、またコウトウスギ(ウンナンコウトウスギ)は、「国内外で食経験もなく、含有成分であるpaclitaxelは医薬品として使用されている化合物であり、極めて強い毒性を有する」と指摘。しかしパブコメでは、WGの指摘に真っ向から反発する意見が多数、寄せられることになった。
25年の販売・利用実績も「食経験、十分とは言えない」とWG
パブコメでは、「長年利用している製品が医薬品となり、自由に買えなくなるようなリストの改正に反対する」などと、愛飲している一般消費者と見られる人物からも反対する声を上げられた他、WGが指摘した「国内外で食経験がない」への反論も多かった。「(WGの指摘は)誤りである」と指摘するとともに、「日本国内において長らく食用で用いられ、健康被害等無く、多くの方の健康維持に役立っている」などとする意見が出された。厚労省によると、パブコメにはコウトウスギの心材は茶やエキスとして一定の期間(25年)販売・利用している、という意見が寄せられたという。
730件に上るパブコメを受けて厚労省は、コウトウスギの食薬区分上の取り扱いを、再度WGで審議してもらった。しかしWGは判断を変えなかった。パブコメで寄せられた25年の食経験(販売・利用)があるという声に対しては、「健康食品における限られた食経験」だと指摘。その上で、「十分な食経験があるとは言えない」などとして、意見を寄せ付けなかった。
「健康食品も食品だ。25年の食経験が十分ではないと言うのならば、他の健康食品はどうなるのか」。業界関係者の間では、WGの判断をそう疑問視する声も上がっている。
【石川 太郎】