食安委の脇委員、健康食品を語る 「サプリと医薬品は違う。疑わしきは止める」(脇氏)
㈱ウェルネスニュースグループ(WNG/東京都港区)はきのう4日、WNG会員向けのオンラインセミナーを開催した。
「健康食品・サプリメントの課題と展望~健康食品の安全性について」というテーマで、講師に「『いわゆる健康食品』に関する報告書」の取りまとめと、国民に向けた19のメッセージの発信に関わった食品安全委員会(以下、食安委)の脇昌子委員を招へいした。大手食品・原料・受託メーカーの他、通信販売会社など関係者40人以上が聴講した。
脇氏は、我が国のリスク評価のあり方について説明した。
健康食品などの新たに開発された食品について安全性を確認する作業をリスク評価と言い、毒性データなどに基づき食安委が評価したものについて厚生労働省・消費者庁・農林水産省が管理の方法や施策を実行するためのリスク管理措置を検討する。これら2つの大きな仕組みの下に食の安全性をが評価されると説明した。
サプリの食経験について
「一口に食経験があると言っても、同じ食材でも部位や調理法、食べる場所が異なれば別物」と脇氏。食経験というのは歴史的レベルの話。サプリメント形態での1~2年の食経験は食経験とは言わないのではないか。販売量や副作用情報は貴重な情報となるが、食安委がそれだけで豊富な食経験があるとは判断できないとした。また、新たな食品を使う場合には有効性が毒性より強いということをさまざまなデータの中で証明する必要があるとした。「疫学データはヒトのデータとしては特に重要」と付け加えた。このような体制が作られた背景にBSE問題が契機としてあったとし、それをきっかけにリスク評価はリスク管理とは別に、独立した組織(食安委)で実施されることになったと話した。
「ただし、食安委によるリスク評価だけにとどまらず、(行政による)リスク管理の後、消費者や事業者など全てのステークホルダーに、仕組みやハザードを理解してもらい、その結果を報告するリスクコミュニケーションが重要な役割を担うことになる」と強調した。
医薬品との違いについて
健康食品と医薬品の違いについても言及した。健康食品には定義がないこと、健常者を対象にデータを取得している健康食品と病者を対象にしている医薬品の違いを知らずに摂取すれば(消費者は)判断を誤る、と指摘した。
また、東京都が昨年、健康食品の摂取者に対して行った意識調査を紹介した。
「非常に満足している」と「多少満足している」を合わせれば48%の人が満足している一方、17%の人が体調不良を覚えたと回答した。これに対して脇氏は「小さな数字ではない」と指摘。健康食品による健康被害を避けるための「19のメッセージ」に沿って摂取の際の注意点をデータに基づきながら解説した。
医師の立場から「小林製薬」問題に
質疑では、今問題となっている小林製薬㈱の「紅麹関連製品」の回収に関する多くの質問が事前に寄せられたが、消費者庁と連携して対応の検討に入った同委員会として、個別の質問には回答できないとの立場から、医師ならびに健康食品に関する安全性の専門家として、可能な範囲で一般論として答えた。
「腎臓・肝臓障害は症状が出にくい。副作用の判断は非常に難しい」としつつ、「1月に面談した医師が(原因を)確証したとしたら、そこで情報を出してもらえればよかったと個人的には思う」と自ら医師としての経験を踏まえて話した。好転反応を否定し、「疑わしければ摂取をやめる」ことが大切だと述べた。
聴講者からは、「実に重要な内容のセミナーだった」、「2015年にすでにこういう取りまとめがあったのだから、リスク評価結果として省庁が足並みそろえて、もっと重く受け止めてリスク管理者の役割を実行しておくべきだった」、「人間の血管にマイクロプラスチックが蓄積しているという話は、初めて聞いてかなり驚いた。品質管理の参考にさせていただく」などの感想が聞かれた。
【田代 宏】
(冒頭の写真:講演する脇昌子氏。TKP新橋カンファレンスセンター会議室で)