食品機能性をテーマにシンポジウム開催
自然免疫制御技術研究組合(香川県高松市、杣源一郎代表理事)とホメオスタシス多視点評価システム開発グループコンソーシアムによるシンポジウム「未来志向の次世代食品機能性と自然免疫」が15日、都内で開催された。約150人の関係者が参加した。
ホメオスタシス多視点評価システム開発グループは、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)次世代農林水産業創造技術の「次世代機能性農林水産物・食品の開発」のコンソーシアム。2014年にスタートし、今年3月までが第1期に当たる。
シンポジウムでは、自然免疫力の低下を抑え、疾患リスクの低減を図ることなどが期待されている食品機能に着目し、神戸大学大学院農学研究科芦田均教授ら同コンソーシアムの研究者7人が、第1期SIPの研究成果について発表した。
芦田氏は、血管機能改善効果の観点から黒大豆種皮のポリフェノールの機能性に注目し、2つのヒト介入試験の検証を行ったと説明。1つ目は煎り黒大豆を用いたオープン前後比較試験を8週間、もう1つは煎り黒大豆から作られたきな粉を使用した黒大豆クッキーを用いた単盲検クロスオーバー試験を4週間にわたって実施した。
両試験では体組成や血圧、加速度脈波を測定し、採尿と採血により血管拡張に関わるNO、酸化ストレスマーカー、ポリフェノール含量を測定。その結果、煎り黒大豆の摂取により、血管年齢や血管健康度が有意に改善。尿中のNOも有意に増加し、酸化ストレスマーカーも改善したと報告した。
また、黒大豆クッキーを摂取すると動脈年齢と収縮期血圧の改善効果が認められ、酸化ストレスマーカーも有意に減少したという。芦田氏は「ポリフェノールを多く含む煎り黒大豆は健康な人の血管機能を向上させ、血管年齢や収縮期血圧を低下させることが明らかになった」と述べた。
(地独)神奈川県立産業技術総合研究所食品機能性評価グループの亀井飛鳥氏は、健康寿命延伸のためには食生活が大きく寄与していると指摘した。同グループでは、脂質代謝や糖質代謝の異常などを改善する作用があると言われている桑葉のメカニズム解明の研究を進めている。
桑葉の機能性についてラットを使った動物試験を実施したところ、高脂肪食を摂取したラットでは血液中脂質量と酸化ストレスが増加したが、高脂肪食と桑葉を摂取したラットでは、血液中脂質量と酸化ストレスが抑えられたと報告。また、肝臓のトランスクリプトームの解析で、桑葉は脂肪酸の酸化を促進することにより、高脂肪食摂取に伴う血中TG値の上昇を抑制したと話した。
(写真:15日に開かれたシンポジウムの会場の様子)