焼津水産化学工業㈱（静岡県静岡市駿河区、山田潤社長）が機能性食品事業で主力素材の１つとするN-アセチルグルコサミン（以下、NAG）の販売数量を伸ばしている。ひざ関節に対する働きを訴求する機能性表示食品の機能性関与成分として、中小から大手まで採用が広がり、配合商品の販売が始まり始めたことが背景にある。需要の増加に応えようと、8億円を投資し生産体制を強化することを決めた。

中小から大手まで届出　発売する動きも活発に

　NAGを機能性関与成分にした機能性表示食品の届出件数は現在66件（8月26日現在）。肌に対する機能表示（うるおいサポートなど保湿）を届け出ているものもあるが、大半がひざ関節への働きを訴求する届出だ。代表的な届出表示（ヘルスクレーム）は、「歩行や階段の上り下りにおけるひざ関節の悩みを改善することが報告されています」（焼津水産のグループ会社UMIウェルネス㈱の届出を引用。研究レビューは焼津水産化学工業で実施）。

　こうしたヘルスクレームを行うNAGを機能性関与成分にした機能性表示食品を大手企業が発売する動きが目立つようになっている。大正製薬㈱（東京都豊島区）は4月、NAGとブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボンを機能性関与成分にしたサプリメント『ロコフル』（30日分90粒入り、5,400円）を発売。ブラックジンジャー由来成分に報告されている、中高年の歩く力を維持する働きも合わせて訴求することで、ひざ関節や脚の筋力が気になる中高年に提案する。

　また、同月には富士フイルム㈱（東京都港区）もNAGを機能性関与成分にしたサプリメント『アユメイト』（30日分90粒入り、3,980円）を発売した。ヘルスクレームは「移動時のひざ関節の違和感を軽減することが報告されています。歩行や階段の昇り降りが気になる方に適しています」。

　他にも、現時点では未発売だが、森永乳業㈱（同）が「歩行や階段の上り下りにおけるひざ関節の悩みを改善することが報告されています」をヘルスクレームとする清涼飲料水の届出を完了させている。また、雪印メグミルク㈱（東京都新宿区）も同様に、ひざ関節に対する機能を表示するミニペットボトル飲料を届け出ている。

焼津水産化学工業、需要増受け8億円を設備投資

　焼津水産化学工業が製造販売するNAGは、キチンを原材料に静岡県内の自社工場で一貫製造するもの。2021年の年間販売数量は、輸出も含めて約180トンだった。2010年前後の最盛期を下回っているものの、特に、ひざ関節領域の機能性表示食品向け機能性関与成分としての需要が伸びていることを受け、同社は今年2月、総額8億円を投じて、国内自社工場のおけるNAG生産体制の強化を決定。近く、第2の最盛期がやってくると見た格好だ。

　同社の「団地工場」（静岡県焼津市）に設備投資を実施する。生産工程の見直し、設備の改良を行い、NAGの生産能力を現比で3割向上させる。これにより、NAGに関する事業拡大を加速させたい考えだ。「今後、現在までに届出が完了している商品が順次発売されることが予測される。輸出も増えている。安定的に供給できるよう今のうちから準備しおきたい」（機能性素材営業部）という。

　新たな設備を通じたNAGの製造開始は来年5月以降となる予定。そのための工事と同時進行でNAGの研究開発をさらに先に進め、機能性表示食品の機能性関与成分として、肌、ひざ関節に続く新たなヘルスクレームを行えるようにしたい考えだ。

　そのために、近く、国内で新たなヒト試験を行うことを検討している。「ターゲットはいくつかあるが、NAGが腸に及ぼす有効性も候補の１つ。動物試験までの段階では、良好な結果が得られている」（機能性素材営業部）という。

【石川 太郎】

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