関与成分巡る検証事業報告書が出揃う 【機能性表示食品】消費者庁、16年度から20年度まで5年度分を新たに公開
消費者庁が今年9月から公開を順次進めていた、機能性表示食品の「機能性関与成分に関する検証事業」報告書について、同庁は11日、2016年度から2020年度までの5年度分を一度に公開した。これで機能性表示食品制度が施行された2015年度から直近2024年度までの10年度分がすべて公開されたことになる。2025年度分もいずれ公開される見通し。
この検証事業は、消費者庁が第三者機関の日本食品分析センターや国立医薬品食品衛生研究所に委託して毎年度実施。事業者が届け出て販売している機能性表示食品を買い上げて機能性関与成分の含量が届出のとおりか分析したり(買上調査)、届け出られた機能性関与成分の分析方法のとおり分析できるかどうかを検証したりする。
機能性表示食品の「品質管理のあり方に関する基礎資料を得る」目的もあり、分析・検証結果の報告書は、これまで非公開だった。しかし同庁は、市民団体が国を相手取って提起した2015年度分報告書を巡る情報公開請求訴訟の最高裁判所判決(今年6月)を受けて、報告書の全面公開を決定。判決は、一部非開示を認めた高等裁判所判決の取り消し・差し戻しだったが、同庁は差し戻し判決を待たず、9月9日に2015年度分を全面公開したのを皮切りに、公開を順次進めていた。
検証事業報告書の全面公開にあたり、同庁の堀井奈津子長官は9月11日に開いた定例会見の中で、「(公開することで)事業者全体による分析方法の改善への取組が促されるのではないかと、このようなことを期待している」と述べている。
国立衛生研による分析方法の検証、撤回に至るケース多く
同庁によると、これまでの買上調査は毎年度60~100品目前後を対象に実施。その結果、機能性関与成分の含量が届け出された値を下回るものも見つかっているが、その数は限定的だ。同庁の公表資料を集計したところ、10年間合計で10品目に満たず、機能性関与成分含量のバラつきがある程度許容されている生鮮食品や、単一の農林水産物を原材料とする加工食品が複数含まれる。
一方、国の研究・試験機関である国立医薬品食品衛生研究所が担当している分析方法の検証では、結果的に届出が自主的に撤回されるケースが多く出ている。同庁によると、11日公開の2016年度から2020年度までの5年度分だけで計191件が撤回された。たとえば2017年度は647件を検証した上で424件に追加資料の提出を依頼。そのうち339件は変更届出がなされたものの、残り85件については撤回届出が行われたという。
こうした分析方法を巡る撤回件数は、10年間合計で240件に上るとみられる。
国立医薬品食品衛生研究所は、10年前の2015年度の報告書で、「機能性関与成分と工程管理のための定量指標成分との関係について明確になっていない」、「機能性関与成分に関する表示が適切でない」、「機能性関与成分と商品名に関連性がないものがある」、「分析方法の表示が曖昧、不十分である」、「実際の商品と試験方法が一致しない」などと指摘している。
【石川太郎】
関連資料:機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業報告書(消費者庁HPより)
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