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進化し続ける機能性表示食品(後)

洗練された届出が続々
 免疫機能以外でも、注目される届出が多く見られた。その中でも、GNGが注目した届出事例をいくつか紹介したい。
◆F18 マルカイコーポレーション㈱「クランベリー100」、機能性関与成分「キナ酸」、届出表示“本品にはキナ酸が含まれます。キナ酸は、トイレが近いと感じている女性の日常生活における排尿に行くわずらわしさをやわらげる機能があると報告されています”。
 注目すべきポイントは、「排尿に行くわずらわしさをやわらげる機能」という表現である。この商品は1報の論文の研究レビューで届出されているが、アウトカムと効果指標は、「尿の回数:一日トータルの排尿回数」、「睡眠の質:日常生活への支障」となっている。そして別紙様式(Ⅴ)-16では、「研究結果から、クランベリー由来キナ酸の摂取が昼間と1日トータルの排尿回数を減少させ、日常生活への支障の改善をもたらす可能性が示唆された」と書かれている。アウトカムが排尿回数だけだと「頻尿」を暗示すると判断される恐れもあるため、「日常生活の質」というアウトカムも追加することで、健康の維持・増進につながる表現としたところがポイントではないかと思う。

◆F417 ラシェル製薬㈱「還元型コエンザイムQ10R」、機能性関与成分「還元型コエンザイムQ10」、届出表示“本品には還元型コエンザイムQ10が含まれます。還元型コエンザイムQ10には唾液量を維持する機能があることが報告されています。年齢とともにお口のうるおいが不足がちと感じる方に適した食品です”。
 一見、ドライマウスを暗示するような表現だが、1報の採用論文には、「口腔内の乾燥を感じている中高年の健常者に、還元型コエンザイムQ10(ユビキノール)を摂取させた」と書かれている。そのため「年齢とともにお口のうるおいが不足がちと感じる方に適した食品」と表示し、疾病の予防、治療効果ではないというメッセージを出している。

◆F549 ㈱タイヨーラボ「茶フッ素タブレット」、機能性関与成分「緑茶フッ素」、届出表示“本品には緑茶フッ素が含まれます。緑茶フッ素には歯の再石灰化を促進し、歯の表面を改善してむし歯の原因となる酸に溶けにくい状態にすることで歯を丈夫で健康にする機能が報告されています”。
 最初に“むし歯”という言葉を見た時には、驚きを隠せなかった。これまで、別紙様式(Ⅶ)-1(作用機序)で疾病名を見ることはあったが、届出表示で見るのは初めてのこと。「むし歯の原因となる酸に溶けにくい状態にすることで歯を丈夫で健康にする機能」とまとめたところが絶妙である。

医薬品リスト収載の成分も
◆F583 SBIIアラプロモ㈱「発芽玄米の底力」、機能性関与成分「GABAとγ-オリザノール」、届出表示“本品はGABAを含みます。GABAは、血圧が高めの方の血圧を下げる機能が報告されています。また本品は、血中の中性脂肪や総コレステロールを低下させる機能が報告されている成分を含みます”。
 機能性関与成分に、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に掲載されているγ-オリザノールが登場した。18年6月の規制改革推進会議で「食薬区分の運用改善」と「機能性表示食品制度の運用改善」が取り上げられ、どちらも同年度内に結論・措置とされた。

 その後、消費者庁と厚生労働省で議論が進み、それぞれ質疑応答集で説明している。厚労省が19年3月15日に公表した「医薬品の範囲に関する基準」に関するQ&Aについて」に、野菜・果物等の生鮮食料品に元から含有される成分である場合は、当該成分を含有することのみを理由として医薬品に該当するとは判断せず、食経験、製品の表示・広告、その製品の販売の際の演術等を踏まえ総合的に判断する。と示された。ただし、成分の抽出、濃縮又は純化を目的とした加工をしておらず、かつ、食品由来でない当該成分を添加していない場合に限られる。今回は、この事例の第1号である。

サイエンス情報をくまなく活用
◆F570 ㈱NRLファーマ「ラクトフェリンDX」、機能性関与成分「ラクトフェリン」、届出表示“本品には腸溶加工したラクトフェリンが含まれるので、舌苔を減らすのに役立ちます”。
 第一印象は、「舌苔を減らすことがなぜ、健康の維持・増進になるのか?」という疑問だった。別紙様式(Ⅴ)-3を読んで納得した。評価指標「舌苔スコア」が、口腔内衛生について評価をする指標として学会などに広く受け入れられている理由を次のように説明している。「評価指標『舌苔スコア』について、平成30年3月に日本歯科医学会から「口腔機能低下症に関する基本的な考え方」についてと題する報告がある。口腔機能低下症とは、口腔内の微生物の増加,口腔乾燥,咬合力の低下,舌や口唇の運動機能の低下,舌の筋力低下,咀嚼や嚥下機能の低下など複数の口腔機能が低下した疾患である。

 上記報告内容は、口腔機能を改善することが、健康の維持・増進に繋がり、医学的及び栄養学的に重要であり、高齢に伴う口腔機能低下症の特徴・診断・管理について記載されている。(中略)舌苔には歯垢と比べ歯周疾患関連細菌の割合が多く、舌苔の付着量が多くなると、舌苔内にいる嫌気性細菌数が有意に増加すると報告もされ、舌苔は唾液や歯垢など、口腔の他部位への細菌感染の供給源とも考えられている。口腔病原菌は、心臓・血管性疾患、糖尿病、誤嚥性肺炎などの誘因になると考えられている。そのため、舌苔量を減少することにより、口腔内を健やかに保つはたらきを助け、健康維持・増進につながると考えられる」と説明されている。

 そして、「表示しようとする機能性と有意差が認められた評価指標との関連性についての説明」として、「舌苔は、唾液や歯垢など、口腔の他部位への細菌感染の供給源とも考えられている。口腔病原菌は、心臓・血管性疾患、糖尿病、誤嚥性肺炎などの誘因になるとも考えられている。そのため、舌苔量を減少することが健康維持にとって大切である」とまとめられている。最終製品による臨床試験で、別紙様式(Ⅴ)-3でここまで詳しく説明されている例は無いのでないかと思う。細心のサイエンス情報に目を光らせ、チャンスとして活用した好事例である。
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機能性表示食品制度は常に進化、高度化している。そして、新しい機能性表示に挑戦できる素晴らしい制度である。今年は、これまで以上に、サイエンスとレギュレーションのセンスが問われる時代に入っていくだろう。

(了)

<筆者プロフィール>
㈱グローバルニュートリショングループ 代表取締役 武田 猛 氏
麻布大学環境保健学部卒業、法政大学大学院経営学専攻修士課程修了。アピ㈱、サニーヘルス㈱を経て2004年1月、㈱グローバルニュートリショングループ設立、現在に至る。国内企業の新規事業の立ち上げ、新商品開発、マーケティング戦略立案などのコンサルティングや海外市場進出の支援、海外企業の日本市場参入の支援を行う。現在まで、国内外合わせて600以上のプロジェクトを実施。著書に「健康食品ビジネス大事典」(パブラボ社)など。

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