迷走するサプリメントのアンチ・ドーピング認証(後)
<運営側は取材に応じず>
「スポーツ栄養Web」の「アンチ・ドーピング情報」では次のような説明とともに、「インフォームドチョイス」と「Certified Drug Free」の2制度の商品リストを掲載している。
「当サイトでは、そのプログラムの実績を含め安全性が高いと考えられるものの中から、『スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン』などを参考に選んだ商品リストを掲載しています」(7月24日現在の表記)。
一方、旧「JADAサプリメント分析認証プログラム」を取得した味の素(株)、(株)明治、大塚製薬(株)など、ほかの認証制度の製品については紹介していない。
「アンチ・ドーピング情報」には、「当協会・賛助会員の商品にはロゴとリンクを掲出しています」の説明があるが、これでは開設当初にうたっていた中立的な情報公開サイトとは程遠いようだ。
ガイドラインに則っているように見せながら、偏った情報提供が行われることによって、最終的に不利益を被るのはトップアスリートである。そうした状況を改善することが、アンチ・ドーピングに取り組む関係者の責務と言える。
そこで、6月21日に(一社)日本スポーツ栄養協会に取材を申し入れ、「アンチ・ドーピング情報」の運営方法などを聞いた。その後、返答がなかったため、7月2日に再度電話で取材を申し込み、さらに7月9日には質問書をメールで送付した。しかし、期限までに回答を得られなかった。
そうしたやり取りが行われた間に、「アンチ・ドーピング情報」の記載内容が変更された。具体的に見ると、「安全性の高い認証プログラムを通過した商品リスト」という章の名称が、「サプリメント選びと注意点」に変更され、また上位3つの認証制度(インフォームドチョイス、Certified Drug Free、Certified for Sport)を推奨する記述なども削除された。
前編で紹介した「2019年4月3日、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)より『スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン』が公表され…(略)…『情報を公開するサイトの運営主体は中立的な立場の組織であること』とし…(略)…アンチ・ドーピング認証プログラムで認証を受けた商品を集約し、当サイトで情報提供していくことになりました」という、ページ開設の趣旨も削除され、変更されている。
取材に応じないため、変更理由は不明だが、サイト運営側の右往左往している様子が浮かんでくる。
<正確な情報の把握、困難な状況に>
「アンチ・ドーピング情報」のページについて、ある認証制度関係者は「本当にアスリートが安心できる内容か」と疑問を投げかける。別の関係者によると、同サイトの運営事務局に問い合わせたが、いつまで経っても連絡が来ないという。
ガイドラインを策定した有識者会議の委員を務めた(独)日本スポーツ振興センター(JSC)の関係者は取材に対し、ガイドラインにある中立的な情報公開機関について「有識者会議では中立的な機関は具体的に決定していない。閉会後の状況は知らない」とコメント。
スポーツ庁国際課では「詳細はJADA(日本アンチ・ドーピング機構)に聞いてほしい」と話すが、JADAでは「管理・監督できる立場にないため、現時点で(中立的な情報公開機関について)具体的にコメントする状況にない」としている。
トップアスリートが適切に商品を選択するためには、情報公開サイトが中立的な立場で運営されているのか、それとも特定の認証制度のために運営されているのかを明確にする必要がある。サイト運営者の立ち位置が明確になれば、それを加味した上で情報の信ぴょう性を判断できるからだ。
健康食品業界のセミナーやシンポジウムでは、一部の認証制度関係者によるほかの認証制度を誹謗中傷する発言が聞かれ、業界関係者にとって正確な情報の把握が難しい状況にある。サプリメントのアンチ・ドーピング認証をめぐる動きは迷走を続けているようだ。
(了)