軽症者データの使用範囲拡大~消費者庁・赤崎課長インタビュー(前)
<「アレルギー」の軽症者、治療薬の使用頻度で線引き>
消費者庁は機能性表示食品の機能性の根拠として、軽症者データを使用できる領域を拡大した。追加した3つの保健の用途の領域(アレルギー1領域、尿酸2領域)については、従来から軽症者データの使用が認められている「コレステロール関係」や「血圧関係」などの7領域にはない“特例措置”も設けられた。どのような考え方の下で改正したのか。消費者庁食品表示企画課の赤崎暢彦課長に話を聞いた。
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消費者庁食品表示企画課の赤崎暢彦課長
――軽症者データを使用できる領域に「鼻目のアレルギー反応関係」、「中長期的な血清尿酸値関係」、「食後の血清尿酸値の上昇関係」を追加した背景は?
赤崎 平成29年(2017年)6月に閣議決定の規制改革実施計画における例示を踏まえ、国民の健康課題等の状況も鑑み、軽症者データを使用できる範囲を従来の7領域に加え、「アレルギー」と「尿酸」に関する3領域にも拡大した。
――「アレルギー」は健常者・境界域と軽症者の境界線を引きにくいと考えられていたが、どのように判断したのか。
赤崎 確かにアレルギーは境界線を引きにくい領域だが、「鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版」に示されている治療目標、アレルギー性鼻炎症状の重症度分類、日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票などを踏まえ検討した結果、アレルギー治療薬の摂取が「時々」の人を軽症者と位置づけた。
消費者庁では今後、制度を運用する上で個々の届出書類を確認し、治療薬を日常的に摂取していることがわかった場合には、届出ガイドラインに抵触することを前提とした対応を取ることになる。また、参考までに言うと、従来から軽症者データの使用が認められている「整腸」も、定量的な線引きを設けておらず、「アレルギー」が初めてというわけではない。
<従来の7領域に“特例措置”導入の可能性も>
――追加した3領域の特例措置として、層別解析を必須としないことや、プラセボを作製できない場合に単盲検試験でもよいとしたことがある。これらの特例措置を認めた理由は?
赤崎 層別解析を必須としないことなどは、あくまでアレルギーと尿酸に関する3領域だけの措置となる。そうした措置を導入した理由を説明すると、次のようになる。
特定保健用食品(トクホ)制度は、7領域(コレステロール・血中中性脂肪・血圧・体脂肪など)の範囲に限り、軽症者データを使用できると規定している。機能性表示食品制度もトクホのルールを準用しているため、この7領域については軽症者データの使用が可能だ。
ただし、トクホと機能性表示食品では、制度の建て付けが異なる。トクホの場合、消費者庁だけでなく、消費者委員会や食品安全委員会の専門家が個々の案件を審査する。申請企業が提出する資料も、最終製品を用いたヒト試験のデータである。個別の商品について専門家が総合的に評価した上で、消費者庁が最終的に許可の適否を判断している。
これに対し、機能性表示食品は届出制であり、届出ガイドラインやQ&Aに沿って消費者庁が判断している。届出資料の詳細に立ち入って、専門家に意見を求めるわけではない。機能性表示食品はトクホのような制度の建て付けでないため、従来の7領域については「有意差判定に当たっては各層の解析が必要」という運用を行っている。
一方、追加した3領域については、多数の専門家による検討の結果、層別解析を必須とせずに、健常者と軽症者を合わせた全体で評価しても、適切な制度運用が可能という結論に至った。1年をかけて専門家の方々が検討した結果である。
――将来的に従来の7領域にも、今回のような特例措置を導入する可能性は出てきそうか。
赤崎 従来の7領域については、今回の調査・検討事業で実施した検討方法を参考に、まずは業界団体で一定の方向性を整理してもらうことが望ましいと判断している。業界内にはさまざまな意見があると思うが、まずは業界団体で議論をして意見を集約してもらう。業界の総意としてまとまった提案内容が、透明性が高くて質の高いものならば、消費者庁としてもキチンと受け止めて、検討する可能性も出てくる。
(つづく)