認知機能表示広告を一斉監視
ネット対象に消費者庁 100社超に改善指導
認知機能領域の機能性表示食品のインターネットネット広告が、景品表示法や健康増進法の規定(優良誤認表示、食品の虚偽・誇大表示)に違反するおそれがあるなどとして、消費者庁の表示対策課は31日までに、100社を超える事業者(届出者)に対して表示を改めるよう指導し、同日発表した。
届出表示の切り出しを問題視か
届け出た機能性の範囲を逸脱しているなどとして改善を指導したもので、特に、届出表示(ヘルスクレーム)の一部を切り出しながら強調する広告を問題視したとみられる。例えば、届出表示は「認知機能の一部である空間認知脳や場所を理解するといった記憶力を維持する機能があることが報告されています」である一方で、「記憶力維持!」などと表示していた広告の改善を指導した。
機能性関与成分の研究レビューを届け出ていながら、このように届出表示から切り出し、言い切り型にして強調することで生じる可能性のある消費者の誤認を懸念しているとみられる。今回の指導はあくまでも広告表示に対するものだが、切り出し表示は商品パッケージなどでも行われており、影響が広がる可能性も考えられる。
消費者庁が行う指導は、措置命令などの行政処分とは異なる。そのため同庁は、指導した企業名や商品名を公表していない。また、改善指導した広告の商品に配合されていた機能性関与成分の名称も、発表資料には見られていない。
改善指導された商品広告、130超に
同庁の発表によると、改善指導の対象となったのは、認知機能に関わる機能性を訴求する機能性表示食品についてインターネット広告を行っていた115社131商品に上る。
認知機能領域の機能性表示食品は、今年2月末時点で223商品が販売されているといい、そのうちおよそ6割に上る商品のネット広告が改善指導の対象になったと考えられる。
表示の改善を求めた広告の中には、物忘れや認知症に対する医薬品的効果効能が得られるかのような表示を行っていたものもあったという。その事例として、「認知症は早めに対策すれば発症や悪化を防げる」などといった表示を挙げた。
また、主な摂取対象者を中高年に設定している商品でありながら、「受験生の考える力を鍛えるために」や「学校・塾でお子様の集中力アップに」などといった表示に対しても改善を求めたという。
認知機能領域、「届出表示の内容が複雑で誤認されやすい」
調査は今年2月に実施した。同庁は日常的業務として健康食品のインターネット広告の監視を行っているが、今回の調査は、機能性表示食品の事後チェック指針に基づく「一斉監視」の枠組みで実施した。また、今回の一斉監視の対象は、認知機能領域の機能性表示食品のみだったという。ただ、それに関連するかたちで、認知機能とは異なる機能領域に関する広告表示の改善を求めた事例もあったとみられる。
認知機能をターゲットにした一斉監視を行ったのはなぜか。
同庁では、認知機能領域の機能性表示食品の広告について、「誤認が生じた場合、適切な診療等の機会を逸してしまうおそれがある」などと指摘。「対象者の範囲や認知機能の作用領域に関する届出表示の内容が複雑で、一般消費者に誤認されやすい」ためで、「認知機能が改善できることを強調した広告表示においては、認知症や物忘れが予防・改善できるものと一般消費者に誤認されやすい」などとして、誤認を背景に医療を受ける機会が損なわれる可能性に強い懸念を示している。
同庁は今回、一般消費者への注意喚起も行った。
【石川太郎】
(冒頭の画像:100社以上に対して指導を行ったことを伝える消費者庁のニュースリリース)