規制改革・専門チーム会合、悪質業者の代弁の場?
規制改革・専門チーム会合、悪質業者の代弁の場?
<機能性表示食品の広告宣伝を議論>
このほど開かれた規制改革推進会議の専門チーム会合は、機能性表示食品の届出・広告宣伝の表現について議論した。
内閣府規制改革推進室によると、今回のテーマは、規制改革ホットラインで寄せられた民間企業の要望が契機となった。
要望は、(1)機能性表示食品の届出時に機能性表示文言・パッケージ・キャッチコピーで問題となる事例、届出後の宣伝広告で届出内容と比べて著しい誤認を与える事例の明示、(2)届出内容について消費者庁表示対策課(表示の取り締まり担当部署)から問題が指摘されることのない仕組みの構築――を柱とする。
これに対して消費者庁は、仕組みの構築については「対応不可」と回答。事例の明示については、現行制度で対応できる旨を回答した。
また会合では、健康食品業界を代表して、(一社)健康食品産業協議会と(公社)日本通信販売協会がプレゼンを行った。プレゼン資料には、「明示だけでなく、暗示でも取り締まりの対象となる」、「思いもよらない事由で摘発されるかもと常に不安」といった業界の不満がずらりと並んだ。
規制改革推進室では、「今回の会合で特段何かが決まったわけではない」と話している。
【解説】
届出内容を届出後の取り締まりの対象から外してほしいという要望は、事業者の自己責任を原則とする機能性表示食品制度の趣旨から大きく乖離したものだ。機能性文言や容器包装の表示をはじめ、届出内容の全てについて、届出企業が全責任を負うのが制度の本質。その責任を国に委ねるという要望は、自立できない業界の体質を露呈したものと言える。
広告・表示については、明確に関連法規に違反しているものを除き、実際に商品が販売され、広告が展開されて初めて、消費者に誤認を与えるかどうかがわかってくる。このため、商品の発売後に、景品表示法や健康増進法を所管する表示対策課による取り締まりが不可欠となる。消費者の目線に立てば、届出後の取り締まりの強化こそ必要となっている。
会合で使用したプレゼン資料を見ると、健康食品産業協議会は業界の自主審査により、機能性表示食品の広告を監視することを提言。だが、既に実施している特定保健用食品(トクホ)の自主審査では、企業名・商品名を公表しないなど、業界にとって都合のよい取り組みとなっている。また、業界団体は機能性表示食品の適正広告自主基準を作成したものの、システマティック・レビュー(SR)で採用した1報のグラフの使用を認めるなど、サイエンスの観点から非常識な取り組みを推進している。消費者の目線に立てば、そうした団体に任せることは不安が大きく、消費者利益を損なう恐れがある。
プレゼン資料によると、業界団体は「暗示でも取り締まりの対象となる」、「思いもよらない事由で摘発されるかもと常に不安」といった業界内の不満を代弁。しかし、これらは、嘘の効能効果をうたって健康食品を販売する悪質業者から、しばしば聞かれる言葉と似ている。
また、「暗示」を取り締まりの対象から外した場合、悪質業者ほど喜ぶだろう。一方、騙される被害者は確実に増加してしまう。規制改革推進会議・専門チーム会合は、まるで悪質業者の要望を代弁する場と化したようだ。