口臭や便臭など、体内で生じる臭いをケアする定番・健康食品素材として知られるシャンピニオンエキス。1989年の発売以来、配合商品数は累計で100以上を数える。開発した健康食品原材料メーカーの㈱リコム（東京都豊島区、浜屋忠生社長）は今後、最終商品販売会社など業界に対し、同素材を配合した機能性表示食品の開発を積極的に促していく考え。そのための体制を5月までに整えた。

リコム、届出支援を本格化　サポート体制が整う

　シャンピニオンエキスを配合した機能性表示食品の届出実績は現時点ですでにある。まずはリコムで届出を実施。原材料供給先の届出をサポートできるようにした。機能性関与成分は、マッシュルームを原料にした同素材に含まれるポリフェノール。「万全を期した。特に分析方法の検討と確立に時間を掛けた」と同社の浜屋社長は話す。

　同社が届け出たヘルスクレーム（届出表示）は次のとおり。「本品にはマッシュルーム由来ポリフェノールが含まれています。マッシュルーム由来ポリフェノールには、腸内腐敗産物として知られているアンモニア、p-クレゾールを減らすことで、腸内環境を良好にすることが報告されています」。

　この届出表示に基づき、商品パッケージでは、マッシュルーム由来ポリフェノール（シャンピニオンエキス）の機能性を次のとおり打ち出す。

「アンモニア、ｐ‐クレゾールを減らし腸内環境を良好にする」。

　もともと「腸内環境を良好にすることが報告されています」としていたが、先ごろ表示見本の変更届を行い、体内で生じる臭気の原因物質として知られる腸内腐敗産物のアンモニア、ｐ‐クレゾールに対する働きを盛り込むかたちに刷新した。同社では、「最新の表示見本で示した機能性を訴求するかたちで、シャンピニオンエキスを配合した機能性表示食品の開発、販売を積極的に提案していく」（同）と強調。体制を整えられるまで控えていた届出サポートを6月から本格化する考えを語る。

臭いケアの定番素材が腸内環境の差別化素材に

　アンモニアやｐ‐クレゾールなどの腸内腐敗産物は、食事などを通じて体内に摂り入れられた栄養素などから腸内細菌が作り出す。それが便臭や口臭など臭気の原因になる。と同時に、有害物質でもあるため、腸管に障害を与えて腸内環境を悪化させる原因にもなる、と考えられている。

　これまでに届け出された機能性表示食品の機能性関与成分に報告されている機能性を見ると、腸内環境に及ぼす働きを訴求できるものは、乳酸菌を始め少なくない。その中、シャンピニオンエキス（マッシュルーム由来ポリフェノール）に報告されている腸内環境に対する機能性は、便臭や口臭など、臭いの原因にもなる腸内腐敗産物を減少させることによるものであるという点で、新規性が高いと言える。同社では、「差別化のために新規の腸内環境改善素材を求めている方に強くお勧めしたい」（同）と話す。

　シャンピニオンエキスを配合した機能性表示食品のコンセプトについて同社では、例えば、筋力維持やウェイトマネジメント（ダイエット）などのために、プロテインの摂取を日常生活に取り入れている健常成人をターゲットにした商品などが考えられる、とする。プロテインなどのタンパク質を多く摂取していることを背景に、アンモニアやｐ‐クレゾールなどの腐敗産物が腸内で過剰に産生されている場合もあるためだ。

　一方、臭いに対する機能性を直接的に表示したい、という向きもあるだろう。実際、シャンピニオンエキスの継続摂取に伴う臭いに対する機能性としては、アンモニアやｐ‐クレゾールの他にもインドールやフェノールといった臭いの原因となる腸内腐敗産物を、非摂取群と比べて有意に減らす働きのあることが、口臭・便臭・体臭の気になる健常男女80人を被験者にしたRCT（ランダム化比較試験）で確認されている。臭いの原因成分だけでなく臭いそのものについても有意に減少することが確かめられており、一定のエビデンスがあるといえる。

　ただ、便臭等を減らす機能が報告されているなどといったヘルスクレームの届出は、今のところ困難と考えられる。リコムでもチャレンジしたが、「現段階では、『アンモニア、ｐ‐クレゾールを減らし腸内環境を良好にする』までが最大限可能な表示の範囲と理解している」（同）という。現在可能なヘルスクレームを通じて、機能性表示食品市場でのシャンピニオンエキスの普及を目指す。

【石川太郎】

（冒頭の画像：リコムが届け出た機能性表示食品『シャンピニオン爽粒』の商品パッケージ）