自律神経の活動測定試験を受託(後) ラットとヒトの整理変化はリンクしているのか?
栄養ドリンク剤(A)をラットに投与した実験例では、腎臓の交感神経活動(RSNA)と血圧(BP)の変化を測定した。最下段に示す、左側の点線が投与時を示す。投与後、5分程度で急上昇していることが分かる。それに伴い血圧も少し上昇している。
一方、ドリンク剤(B)では交感神経活動、血圧ともに上昇するが、短時間(30分程度)でその効果は消失する。
これらは実際に市販されている栄養ドリンク剤で、(A)の方が爆発的に売れて、(B)の方はなかなか売れることなく、リニューアルの果てに終売に至った。ラットで測定した結果が実際にヒトが体感することで販売数字にも差が出たものと推察し、ラットによる試験結果をヒトでも確認することにした。
ラットと人の生理変化がリンクしているかどうかについて、まずグレープフルーツの匂いとラベンダーの匂いをラットに嗅がせて、交感神経と副交感神経の測定を行った。
褐色脂肪の交感神経の変化に注目し、グレープフルーツの匂いをラットに10分間嗅がせたところ、褐色脂肪の交感神経が上昇した。褐色細胞の交感神経が興奮するとラットの体温が上がることが分かっているので、実際に体温が上がるかどうかを検証するに当たり、水とグレープフルーツ、そしてグレープフルーツの主成分であるリモネンで体温の変化を測定したところ、水では3時間経ってもほとんど変化がなかったが、グレープフルーツとリモネンでは体温が上昇した。
ラベンダーでも同様の検証をしたところ、ラベンダーとその主成分であるリナロールは30分後ぐらいから低下しているという生理変化が見られた。そこで、ヒトでどうなるのかを確認してみた。
ヒトで生のグレープフルーツを半分に切った面で30分間その匂いを嗅いでもらった。体温をサーモグラフィーで測定したところ、30分後に匂いを嗅ぐのをやめても90分まで体温が上昇し続けた。
被験者にインタビューすると、背中だけでなく体全体がポカポカしたいとう回答を得た。褐色脂肪細胞(BAT)の交感神経だけではなく、手足の血流改善まで起きて全体的に体温が上昇していることが推察できた。
自律神経と体内時計が極めてリンクしているというところから、ラットの休息期(Light period)と活動期(Dark period)について、実際に体温の変化が起こるのかどうかを見た。すると、ラットの休息期に嗅がせるとグレープフルーツの匂いを嗅がせた方は体温が上昇し、ラベンダーの匂いを嗅がせた方は体温が低下した。
ところが、彼らの活動期のDark periodで同じように嗅がせても顕著な体温変化が見られなかった。このことから、体温変化には投与時間も関与しているのではないかということが分かった。
ラットでは体内時計の存在部位(脳の視床下部・視交叉上核が自律神経と生理機能調節に関与していることは永井氏らの検討で明らかになっている。
人でも投与時間によって体内時計と自律神経、生理変化が密接に関わっているということが証明されつつある。これらのことから、サプリメントの摂取時間や濃度などについても今後の課題として残されている。
(了)
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【聞き手・文:田代 宏】