続・厚労省方針「脱プラセボ対照へ」 薬事申請の迅速化へ、7月10日に説明会
厚生労働省がプラセボを使用しない試験の推進に乗り出していることについては、6月26日付の記事「厚労省方針『脱プラセボ対照』へ」で既報済みである。その取り組み「リアルワールドデータ活用促進事業」について厚生労働省への取材を踏まえ、具体的に説明する。
このような動きのきっかけを作ったのは、難病や希少な病気などについて、治験の実施を行おうとした場合に「患者が集まりにくい」、「非常に長い時間やコストがかかる」などの問題点を解消するため、プラセボ対照の代わりにデータベースを使用する必要に迫られたことからだ。
日本には、患者が何の疾患で、どのような状態で存在しているかを集めたデータバンク「疾患レジストリ」が各機関に保有されている。「これらを薬事の承認申請に活用していきたい」というのが厚労省の考えだ。そして、2023年4月からの新たな予算事業として「リアルワールドデータ活用促進事業」の実施が決まった。
同事業では、薬事活用に前向きなレジストリ保有機関を公募で選定し、そこを対象にデータの信頼性をチェックする(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)の担当者が、該当するレジストリ保有機関を訪問してデータベースの実態などを確認。データの信頼性を確保するためには何が必要なのかを助言したり、手順書の整備を補助したりする。
また、保有機関の関係者に対してPMDAが研修会を開催するなどし、薬事申請の中で特に重要なデータの信頼性確保について、具体的なノウハウを身につけてもらうというのが同事業の目的。
「結果として、実際にそのレジストリのデータを使った薬事申請というのが今後増えていくということに期待する」(厚労省)とし、「まずはレジストリの活用が最も想定されやすい希少疾患に関するデータを集中的に収集しているが、将来的には必ずしもそこに限定するものではない」と述べている。
PMDAにおいては、がん治療を目的とした非臨床試験の活用を目指す「非臨床試験の活用に関する専門部会」が立ち上がっており、すでに5回の会合を終えている。同専門部会との関係性について厚労省は、「取り扱っている中身として趣旨が通じるものがあるのかもしれないが、特に意識してこの会議との関係性を考えているものではない」としている。
「継続して発展させて行きたい」と意気込む厚労省は、PMDAの協力の下、4月10日~5月19日までレジストリ保有機関に対するアンケート調査を実施した。そのアンケートを基に7月10日、オンラインで説明会を開催する。その後、対象機関の公募や選定に移る予定だ。
【田代 宏】
(冒頭の写真:レジストリ保有者に対する事務連絡)