神話「プラセボ対照試験」を解消せよ! 唐木英明東大名誉教授がウェッジで主張
プラセボ対照試験では、理論的にも実際上も食品機能を測定することが困難。
「神話を解消せよ!」東京大学名誉教授の唐木英明氏は、「〈紅麴問題〉機能性表示食品に山積する不適切な根拠論文~薬理学者だけが知る真の理由」と題して、機能性表示食品の届出におけるプラセボ対照試験について問題提起する文章をきょう2日付の『Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)』に投稿した。
同氏はウェッジ・オンラインで、食品における臨床試験の実態を批判した「機能性表示食品制度の現状と課題—機能性のエビデンス」(上岡洋晴著)と「受託研究機関主導の機能性食品試験における誤解を招く表示が日本で頻繁に観察:メタ疫学研究」(Journal of Clinical Epidemiology(臨床疫学ジャーナル)169巻)の2つの論文を紹介している。
2報の論文では、機能性表示食品の届出論文の質の悪さ、論文を引用した広告・プレスリリースに都合のよいこじつけが多く見られることなどが実例を挙げて指摘されている。
このような問題が起きる原因について唐木氏は、論文が指摘する問題点の他にも重大な原因があると忠告する。
同氏は、薬理学者だけが知る真の理由として「臨床試験の定番であるプラセボ対照試験は、その原理的な欠陥から、食品機能を測定することが困難であるという事実がある」と主張。そもそも健常者を対象としなければならない食品の試験で、プラセボ対照試験を用いることの困難な理由を詳しく説明している。
プラセボ対照試験を使って食品機能を測定することが困難であるにもかかわらず、機能性表示食品のガイドラインではプラセボ対照試験が実質的に義務化されている。すると、有意差をなんとしても得ようとして各種のトリックが使われる。これが前述した論文で指摘されたような「機能性表示食品の根拠論文で多くの問題が起こっている真の理由」と分析する。
そしてこれらを解決するには、「社会に広がったプラセボ対照試験を金科玉条とする強固な先入観」を払しょくするしかないとした上で、プラセボ対照試験を盲従するしかないという業界神話の解消を呼び掛けている。