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神代から令和まで健康食品のルーツを探る~歴史から見えてくる課題は何か?(21)

(公財)食の安全・安心財団理事長 東京大学名誉教授 唐木英明唐木英明

<錠剤・カプセル形状のサプリ登場>
 1991年の特定保健用食品(トクホ)誕生から、2015年の機能性表示食品誕生までの出来事を追ってみる。
 2000年、それまでは錠剤、カプセルなどの形状であれば医薬品と判断されていたが、この判断を止めて、そこに含まれる成分などで判断することになった。その結果、それまでのトクホはだれが見ても食品と分かる「明らか食品」の形状だけだったが、それから後は錠剤やカプセルの形状も許可の対象になった。この措置の背景には、米国で販売されている健康食品の多くが錠剤、カプセルの形状であり、これを食品として認めないことは貿易の非関税障壁であるという米国からの圧力があったためと言われる。
 01年、規格基準を決めて栄養機能表示をする「栄養機能食品」が制定されて、トクホと合わせて「保健機能食品」と呼ばれた。栄養機能食品として販売されているのはビタミン、ミネラル、n3系脂肪酸である。

<刷新したトクホ制度>
 05年、トクホの審査基準が変更になり、①条件付きトクホが導入された。これはトクホほど厳密な科学的根拠はないが、一定の有効性が確認できる場合に、限定的な科学的根拠であることを表示をすればいいという製品である。②規格基準型トクホが導入された。これは十分な科学的根拠が蓄積されている関与成分については、定められた規格基準への適合性のみの審査で許可される製品で、食物繊維難消化性デキストリンと乳果オリゴ糖製品がある。③疾病リスク低減表示が容認された。現在認められているのは若い女性のカルシウム摂取と、将来骨粗鬆症になるリスクの関係、そして、女性の葉酸摂取と、神経管閉鎖障害を持つ子供が生まれるリスクの関係である。④保健機能食品には「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の表示を義務化した。
 06年、安倍政権が発足しアベノミクスによる経済活性化の一環として、健康食品の規制緩和を計画した。

<機能性表示食品誕生>
 07年、議員団体「健康食品問題研究会」が発足し、健康食品の機能性表示を可能にすることを提言。09年、消費者庁と消費者委員会が設置されて、健康強調表示を管轄することにとなった。10年、消費者庁が健康食品の表示に関する検討会論点整理を発表。11年、消費者庁「食品の機能性評価モデル事業」を日本健康・栄養食品協会が委託業務として実施。13年、内閣府規制改革会議を経て、一般健康食品の機能性表示の容認を閣議決定。15年、機能性表示食品制度が発足することになった。

(つづく)

<プロフィール>
1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部助手、同助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員などを経て東京大学農学部教授、東京大学アイソトープ総合センターセンター長などを歴任。2008〜11年日本学術会議副会長。11〜13年倉敷芸術科学大学学長。専門は薬理学、毒性学、食品安全、リスクコミュニケーション。

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