睡眠の質や気分の向上、ストレスの緩和が期待できるサプリメント向けの新しい原材料が、近く日本で発売される。現在サンプルワークが行われている。植物のトウモロコシの若葉を原料にして抽出したもので、「6-MBOA」というメラトニンに構造が似たポリフェノールの一種を有効成分として含む。米国など海外では以前から販売されていたが、日本ではまっさらな健康食品素材。輸入販売を手がける㈱CICフロンティア（東京都港区、板波英一郎社長）では、「発売前から問い合わせが多い。製造元も日本市場に期待している」と話す。

有用成分6-MBOA、メラトニンに構造似る

　クロレラ工業グループのCICフロンティアが日本での発売準備を進めているサプリメント・健康食品向け原材料の製品名は「マイジノール（Maizinol）」。開発、製造するのは、米国を拠点とする機能性食品素材開発・製造会社のユニジェン（Unigen）である。両社は以前から協働関係にあり、CICフロンティアが販売を手がけているサプリメント原材料の1つ、植物由来の関節ケア素材「ユニベスティン（Univestin）」も同社が開発、製造する。

　睡眠の質の向上や精神的なストレスの緩和を訴求する健康食品素材は少なくない。そのなかでCICフロンティアとユニジェンでは、マイジノールや有用成分6-MBOAのストロングポイントとして、摂取後の作用機序（作用メカニズム）を挙げる。

　「サーカディアンリズム（概日リズム）」と呼ばれる、体内時計（生物時計）を形成する24時間周期のリズムに合わせ、概日リズムを調整して睡眠を促すホルモンの一種、メラトニンの体内合成を促進。これにより、概日リズムを整え、睡眠の質を向上させ、ひいてはストレスの緩和につながる、という。メラトニンの体内合成を促進させられるのは、6-MBOAが、それらを合成する酵素の活性を高めるためだ。CICフロンティアでは、「ストレス睡眠系の素材は多いものの、作用機序が解明されていることがマイノジールの最大の強みだ」と強調する。

新規素材である一方で研究開発の歴史長く

　実は研究・開発の歴史が長い。CICフロンティアによると、6-MBOAの研究が始まったのは1980年。米国ユタ大学の研究グループがげっ歯類の繁殖因子として研究を進めたことが開発の端緒となった。

　その後2006年、ユニジェンが6-MBOAの抽出方法などの技術開発を開始。そして08年、安全性試験や機能性試験などを実施した上で製品化された。当初、ヒトを対象に検証され、論文発表もされた機能性はストレス緩和のみだったが、その後も研究が続けられ、20年、睡眠に及ぼす有用性を報告する最初の論文が発表。その後も研究が続き、21年、カナダの保健省が運用する許認可制の機能性表示制度「ナチュラル・ヘルス・プロダクト」に登録──などといった経緯をこれまでに辿ってきたという。

　細胞や動物を対象にした前臨床研究からヒトを対象にした臨床研究まで、長い時間をかけた研究・開発が行われるとともに、米国など海外市場で一定の採用実績を作った上で、日本のサプリメント・健康食品市場に初めて投入されることになる。

期待される機能性表示食品制度への対応

　睡眠の質向上やストレスのケアを訴求するサプリメント・健康食品に対する消費者ニーズは、新型コロナ禍で大きく高まった。その中で、マイジノールを国内市場に広く普及させていくためには、機能性表示食品制度への対応が必要不可欠といえる。この新規素材は果たして、機能性表示食品対応素材として国内サプリメント・健康食品市場に展開していけるのだろうか。

　機能性関与成分は6-MBOAであることが明確であると考えられる。また、作用メカニズムに関しても、前臨床研究から合理的な考察が可能といえる。あとは、表示する機能性の科学的根拠（論文）が、機能性表示食品の届出ガイドラインなどに則しているかどうか、また、その「質」が事後の検証にも耐えられるかどうかが焦点になりそうだ。

　「機能性表示食品対応素材として展開してくことはもちろん視野に入れている。ユニジェンの全面的なバックアップを得ながら、マイジノールが機能性表示食品制度に対応できるかどうか、慎重に検討しているところだ」とCICフロンティアでは話す。消費者イメージにも優れる植物に由来する、新たな睡眠・ストレスケア機能性食品素材の日本での今後の展開が注目される。

【石川太郎】

＜COMPANY INFORMATION＞
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TEL：03-3433-1311
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事業内容：健康食品素材の輸出入