睡眠ケアのベネトロン、新領域へ 【機能性表示食品特集】常磐植物化学研究所、ヒト試験を新たに
植物エキスメーカーの㈱常磐植物化学研究所(立﨑仁社長)。機能性表示食品対応素材のラインアップを豊富に揃える。そのうち届出件数が最も多いのは、睡眠ケアを訴求できる「ベネトロン」。90件に迫る。同素材については今後、表示可能なヘルスクレームを他の領域にも広げ、機能性表示食品市場への一層の普及を図る考えだ。そのために今年、ヒト対象研究を新たに実施した。
植物由来素材で睡眠ケア、グミなどにも配合拡大へ
ベネトロンは、中国で昔からお茶として飲まれてきたキョクチクトウ科植物ラフマ(学名:Apocynum venetum L.)の乾燥葉を抽出・精製したエキス粉末。健康食品向け原材料として同社で開発、発売したのは2002年だった。機能性表示食品制度の施行を契機に注目を集めるようになった素材だが、販売期間は20年を超える。
「ラフマ由来ヒペロシド、ラフマ由来イソクエルシトリンには睡眠の質(眠りの深さ・起床時の睡眠に対する満足感)の向上に役立つ機能があることが報告されています」。
ベネトロンに含まれる特徴成分、ラフマ由来ヒペロシドおよびラフマ由来イソクエルシトリンを機能性関与成分とするかたちで、睡眠ケアの訴求で届出が初めてなされたのは2017年。以来、現在までに85件を超える届出が積み上がることになった。
届出件数が大きく伸びたのは20年以降。新型コロナ禍も背景に、低下しがちな睡眠の質をケアするニーズが高まるなか、植物から得られる素材でそれを訴求できることが注目された。
届出件数が100件、200件と積み上がっていく機能性表示食品対応素材もある。同社では、ベネトロンもそうした素材に成長させたい考え。そのために、現在、力を入れているのは、サプリメント形状ではない一般加工食品にも配合製品を広げていくことだ。
これまでにもドリンクやゼリーなどの形態で届け出されている。だが、件数としてはサプリメントが圧倒的に多い。9割超を占める。その一層の拡大も図りながら、ここにきて注目を集めているグミをはじめとする一般加工食品にも配合製品を広げていくことで、相乗的に届出件数を伸ばしていきたい考え。ベネトロンには、通常タイプのほかに、ドリンクやゼリーなどへの配合に適した水溶性を高めたタイプ(「ベネトロン-W」)もある。
これまでの知見踏まえ、フェムケア領域への広がり目指す
また、睡眠ケア以外にも可能なヘルスクレームを広げることを目的に、今年、ヒト対象研究を新たに実施した。これまでの基礎研究やヒト対象試験などから得られている知見を踏まえ、ベネトロンを配合した機能性表示食品をフェムケア(femcare)領域に広げていくためのRCT(ランダム化比較試験)を行った。
新しい試験結果の詳細はまだ非開示。過去の研究では、症例報告ではあるが、ベネトロンを含むサプリメント一定期間摂取することで、PMS(月経前症候群)を緩和する可能性が示されている。
エキスで届出のローレッシュ、届出件数じわりと増加
ベネトロンの他にも、機能性表示食品市場への普及に向けて最大限の力を注いでいる素材がある。
オーラルケア機能を訴求する「ローレッシュ」である。ゲッケイジュ(月桂樹)の乾燥葉を抽出・精製したエキス粉末で、含有するデアセチルラウレノビオリド、コスツノリドを指標成分とする機能性表示対応素材。エキスとしての届出により、「健常な女性の歯ぐきを丈夫で健康に保つ機能があることが報告されています」といったヘルスクレームを可能にした。
エキスを機能性関与成分にした機能性表示食品は、通常よりも、品質管理や同等性確認などの面で届出のハードルが高まる。それでも、昨年3月に初めて届け出されて以来、届出件数がじわりと増えている。同社では、「エキスに関しても、試作品の分析を含めた届出サポートをしっかりやらせてもらっている」と話す。
【石川太郎】
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