疾病リスク低減表示トクホ茶、審議へ 桑の葉由来イミノシュガー、食安委でリスク評価
疾病リスク低減表示を行う特定保健用食品(トクホ)の表示許可が消費者庁に申請された3製品のうち1製品について、食品安全委員会で食品健康影響(リスク)評価が始まる。
『健康茶 血糖値対策500』を製品名とする茶系飲料の安全性を審議するもので、関与成分は「桑の葉由来イミノシュガー」。表示許可が求められた保健の用途は、「食後の血糖値の上昇を抑え、2型糖尿病の発症リスクを低減する可能性がある」旨とされている。内閣総理大臣からの諮問を受けて同委員会は18日、消費者庁の担当課を呼び、同製品の概要などについて説明を求めた。
同庁は今年2月、新たな疾病リスク低減表示トクホの表示許可申請を受け付け、効果と安全性に関する審議を消費者委員会に求めたことを明らかにしていた。
同トクホは、通常のトクホとは異なり、関与成分による疾病リスク低減効果について、疾病名に直接言及しながらの表示を認めるもの。
申請があったのは3社3製品で、桑の葉由来イミノシュガーを関与成分にした茶系飲料も含まれる。同成分は、他の2製品で申請された関与成分と異なり、食品安全委員会でリスク評価を受けたことがない。そのため、同委員会の新開発食品専門調査会で安全性が審議されることになった。
他の2製品では、心血管疾患リスク低減、メタボリックシンドローム発症リスク低減に言及する表示の許可がそれぞれ申請されている。
18日の食品安全委員会の会合で公表された資料によれば、疾病リスク低減表示トクホとして表示許可が申請された桑の葉由来イミノシュガーを関与成分とする『健康茶 血糖値対策500』の有効性は、少なくとも3つの視点から検証されている。
まず、同製品を被験飲料にした有効性試験(ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験)。血糖値が境界域、または正常域だが食後30分血糖値が高めの男女76人を対象にしたヒト対象研究の結果、プラセボ群との比較で食後血糖値の上昇が有意に抑制されたという。次に、食後血糖値と2型糖尿病発症リスクとの関係を調査した観察研究。この研究では、食後血糖値の高い人は将来の2型糖尿病発症リスクが高まることが示されている。そして、桑の葉由来イミノシュガーと同じ作用メカニズム(αグルコシダーゼ活性阻害作用)を持つαグルコシダーゼ阻害薬による2型糖尿病発症リスク低減抑制効果を示す研究報告。この研究では、境界型を対象にした試験で、2型糖尿病の発症リスクを低減することが報告されているという。
疾病リスク低減表示トクホには、規格基準型と個別申請型の2種類がある。
前者についてはカルシウムと葉酸の2つ関与成分について基準が定められており、カルシウムに関しては、「日頃の運動と適切な量のカルシウムを含む健康的な食事は、若い女性が健康な骨の健康を維持し、歳をとってからの骨粗鬆症になるリスクを低減する可能性があります」といった骨粗鬆症の発症リスク低減に関する表示を認めている。
一方、個別申請型については、表示許可以前に、企業からの許可申請が行われたこと自体がこれまで無く、今回申請された3社3製品が初の事例。許可されれば、消費者に大きなインパクトを与えることが予想されるだけに、消費者委員会、食品安全委員会の審議の行方や、医薬品を所管する厚生労働省はじめ製薬メーカーのほか医療に関わる専門家などの受け止めが注目されている。
食品安全委員会、「慎重な審議が求められる」
18日の食品安全委員会の会合では、委員の間で、「慎重に審議すべき」案件であることの認識が共有された。
松永和紀委員は、「(これまでに許可されている疾病リスク低減表示トクホとは)非常に異なるタイプの表示許可申請だと受け止めている。トクホは健常な成人が摂取する食品だが、2型糖尿病という疾病名が表示されることで、疾病予備群や境界域などの方々が好んで摂取するというようなことが容易に想定できる」と指摘。
そのうえで、「リスク評価においても、主な摂取者がどのような方々になるのかというのは、非常に重要な要素になってくる」との見解を示し、「難しいリスク評価になる。いろいろなことを考えながらリスク評価に臨む必要がある」と語った。
脇昌子委員も、「2型糖尿病を発症しない効果が期待できると誤認される」可能性に懸念を示した。消費者庁の担当課は、「保健機能食品の正しい理解と適切な使用について引き続き普及啓発を進める」と答えた。
【石川太郎】
(冒頭の画像:関与成分の配合量は1本(500ml)あたり3.5mgとされている。18日の食品安全委員会で配布されたリスク評価に関する資料から)
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