疲労感軽減機能の新・ニンニク成分 普及に向けて原材料メーカー2社協働
一般的にはあまり知られていないニンニク由来の機能性成分の需要を創出しようと、昨年来、サプリメント・健康食品の原材料事業者2社が手を組み、学識経験者の協力も得ながら、普及・啓発活動を進めている。機能性表示食品を通じて、疲労感を軽減するヘルスベネフィットを消費者に提供していくため、まずは成分認知度を業界内外で高めたい考えだ。その成分は、生のニンニクにはほとんど含まれないという。
研究会を発足 認知向上目指す
ニンニク由来機能性成分の普及啓発に取り組んでいるのは、備前化成㈱(岡山県赤磐市)と㈱ダイセル(大阪市北区、東京都港区)の2社。
紀元前から栽培されていたといわれるニンニクは、健康に良い食材として知られ、アリシンやアホエンなどといった含有成分の名称もある程度、認知されている。
一方、両社が普及させようとしているのは、S-アリルシステイン、略称「SAC(サック)」という含硫アミノ酸の一種。強い抗酸化作用など、複数の生理活性を持つ有望な成分であることが以前から報告されていたものの、生のニンニクにはほとんど含有しないこともあるためか、健康食品業界内も含めて認知度が課題になっていたという。
そのため、両社は昨年10月、SACの認知度向上や普及啓発を始め、機能性研究のさらなる進展などを目的に、酸化ストレスなどライフサイエンス分野の研究者、同志社大学大学院の市川寛教授(生命医科学研究科)を会長に迎えるかたちで「SAC研究会」を立ち上げた。
SACは生のニンニクにはほとんど含まれない。だが、熟成・発酵する過程で増加する性質を持っている。このため、一定期間、熟成させて作る黒ニンニクなどに特徴的に含まれることになるものの、「高含量化させるのが難しかった」と、ニンニクを用いた健康食品原材料の製造・販売で30年以上の実績がある備前化成は説明する。黒ニンニクのSAC含有量は1グラムあたり0.5mg程度、熟成させたにんにくでも2mg程度にとどまるという。
一方、ニンニク中のSAC含量を大きく高める技術がすでに確立されている。備前化成が独自に開発した発酵技術(技術名称:SACLATION)がそれで、SACの含量を、生ニンニク比でおよそ200倍に相当する1グラムあたり10㎎まで高められるようにした。同社では現在、SACLATIONを活用して製造するにんにくエキス末(SAC含量1%以上)の原材料販売を行っている。
機能性表示に対応 研究会で届出支援も
また、ダイセルでもSACを高含有するにんにくエキス末の原材料販売を展開。同素材は既に機能性表示食品対応素材になっている。SACの普及啓発に力を入れる理由の1つがこれだ。
現時点で可能な訴求機能は抗疲労で、具体的には、「S-アリルシステインには、毎日の摂取により、日常生活における一時的な疲労感を軽減する機能があることが報告されています」(一部省略)というヘルスクレーム。1日あたりに必要な摂取目安量はSACとして2mg。昨年6月、まずはダイセルが届出を行い、SACとして初の届出実績を作っていた(エキスの指標成分としての届出は除く)。
今後、SACで可能なヘルスクレームは拡充されていく見通し。まずは、脳の疲労(精神的な疲労)の軽減機能が新たに加わりそうだ。備前化成でヒト試験(RCT)を実施し有効性を確かめ、論文発表も行った。現在、同社で届出中だ。「(日常生活における)肉体的な疲労と精神的な疲労の双方に対する機能を表示できるようになれば、(SACの)価値がさらに高まる」と今後に期待を寄せる。
SAC研究会は先月、初の学術集会を都内で開催し、本格的な活動を開始した。会長を始め、両社や同研究会に参画することになった㈱桃屋の研究開発担当者らが、SACの機能性をめぐる研究成果を参加した業界関係者らに伝えた。
研究会では今後、SACを配合した機能性表示食品の届出を増やしていくため、最終製品販売会社などに対する届出のサポートや学術情報の提供など進めていくという。
【石川 太郎】
(冒頭の画像:SAC研究会のロゴマーク。下の写真:10月13日に都内で開催されたSAC研究会第1回学術集会の様子。備前化成提供)