特集・周年企業<味の素冷凍食品>
冷凍食品発売50周年、今も進化を続ける『ギョーザ』
味の素冷凍食品㈱は冷凍食品発売50周年を迎えた今春、新商品発売やリニューアルを実施。トップシェアを誇る冷凍餃子カテゴリーでは、コロナ禍における消費者の嗜好の変化・ニーズの多様化などにも対応し、バラエティー豊かな商品展開を行っている。長年にわたる同事業への取り組みを『ギョーザ』開発担当の谷隆治氏に聞いた。
それぞれの時代性に合わせてリニューアル
1964年東京五輪を契機にわが国にも冷凍食品が活用されるようになり、70年代には一般家庭にも普及していくことが予見された。そこで味の素本社では72年に『ギョーザ』を含む冷凍食品全12品目を発売。当時の開発コンセプトは、家庭の食卓にのぼる頻度が比較的高い、家庭で手づくりしにくい、家庭の調理器具で解凍調理が容易にできるの3つだったという。
「その後は、85年にギョーザなどの惣菜類を『今晩のおかず』としてシリーズ化しました。そして97年にはフライパンに油を引かなくてもパリッと焼ける画期的な製法を開発。02年の30周年には『おいしさは素材から』と原料の安全性確立に取り組み、03年にはプロにならった手作りに近い製法も導入。08年には継続した安心・安全の取り組みの一環として豚肉・鶏肉・野菜を当社指定農場産としました。そして12年には油・水なしでパリッと焼ける製法に進化。冷凍食品業界としては初となる『羽根の素』の技術開発により、冷凍餃子市場の活性化にも寄与できたと思います」。
モニタリング調査の結果を受け、油・水なしで、フライパンに並べるだけで誰でも簡単にパリッとした羽根つきギョーザが焼き上がる商品進化させたことはまさに画期的。しかも油跳ねがほぼないため、蓋を洗う洗剤も少なくてすむ。また味の素ならではの本格的な調味がすでになされているので、そのまま食べてもおいしいとの評価を得ている。
この12年の技術革新により、発売した同年の販売数は前年比2ケタの伸びを記録。発売以来、社内では常に消費者の声に耳を傾け、「永久改良」を合言葉にしてほぼ毎年のようにリニューアルを重ねてきたからこそ、消費者からの支持を得て、長く冷凍餃子の分野でトップシェアをキープできているのだろう。
コロナ禍で進んだ多様化にも柔軟に対応
現在は商品群も広がりを見せ、この春に新発売となった『黒胡椒にんにく餃子』、『シャキシャキやさい餃子』を含め全11品のラインナップとなっている。
「たとえば『黒豚大餃子』ですと鹿児島県産黒豚を使用したもっちり厚皮で焼き目はパリッとした、肉汁あふれる大ぶりな餃子です。また『米粉でつくったギョーザ』は小麦・卵・乳不使用の商品。これらの既存商品もリニューアルを実施しました。一方、『黒胡椒にんにく餃子』はコロナ禍で家飲み需要が増えたことから発売開始したものですし、『シャキシャキやさい餃子』は普段の食事から積極的に野菜が取りたいとのニーズに応え、野沢菜、大根といったこれまであまり餃子に使われていないがシャキシャキ感を楽しめる新商品です。冷凍餃子におけるニーズの多様化は期待の表れだと捉えています。これからも生活者の皆さまに寄り添った、さまざまな商品を提供できたらと思っています」。
冷凍餃子の市場は20年度に約600億円市場とされるが、年間の購入率は約4割、購入者の年間の平均購入個数は約6個であるため、まだまだ成長の余地があり、「今後も果敢にチャレンジしていきたい」と意欲を見せる。
【聞き手・文:堂上 昌幸】
(冒頭の写真:72年発売当時の『冷凍ギョーザ』)