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熟成ニンニク抽出液の有用性(後)
湧永製薬記者セミナーで三木氏が発表

 湧永製薬㈱(東京都新宿区、湧永寛仁社長)中央研究所の三木里美氏は2日、同社が開催した記者セミナーで「熟成ニンニク抽出液による慢性炎症の改善」とのテーマで同抽出液による改善作用とメカニズムについて、4年にわたる研究成果を報告した。

慢性炎症の測定

 同氏は加齢や肥満、喫煙などによって徐々に引き起こされる慢性炎症について、C反応性タンパク質(CRP)を指標とした測定を行った。CRPは、体内で組織の破壊や炎症が起きると血中に増えてくる炎症マーカー。0.3mg/dlだと正常な範囲内、0.1から1mg/dl程度の値が数週間以上続くようだと慢性炎症が生じている可能性があるとされている。

熟成ニンニク抽出液の慢性炎症に対する作用

 実験では、慢性炎症によって引き起こされる動脈硬化を発症するマウスを使用。マウスに熟成ニンニク抽出液を混ぜた餌を食べさせ、血漿中のCRPの濃度を測定した。その結果、動脈硬化を発症するマウスでは、正常マウスと比較してCRPの濃度が顕著に高くなったが、同抽出液入りの餌を食べさせたマウスでは濃度が抑制された。

 さらに、動脈効果を発症するマウスの大動脈を摘出し、動脈硬化の度合いを測定した。血管に脂質が沈着した部分の面積を数値化したところ、通常の餌を食べさせた動脈硬化発症マウスでは脂質の沈着(動脈硬化)が顕著に認められたが、同抽出液を入れた餌を食べさせたマウスはその面積が顕著に低下することが分かった。

慢性炎症改善のメカニズム

 以上から、熟成ニンニク抽出液は、慢性炎症の改善を伴って動脈硬化を改善することが明らかとなった。次に、同抽出液がどのようなメカニズム亢進で慢性炎症を改善するかを検討した。
 慢性炎症の亢進には、マクロファージが大きく関わっている。マクロファージは炎症が起こった部位などに入り込み、炎症を調節することが知られており、いくつかの表現型を示す。
 抑制性マクロファージと炎症性マクロファージという2つの型があり、抑制性マクロファージは炎症を抑制する方向性に働く一方で、炎症性マクロファージは炎症を促進する。正常な組織では、炎症が起きた場合でも炎症を抑制するシステムが働いて、抑制性のマクロファージを増加させる。

 この抑制性マクロファージは、血管の炎症を抑制する抗炎症性のサイトカインを分泌し、結果として健康な血管の維持に寄与することができる。一方、慢性炎症が起きた組織では炎症性抑制システムがうまく働かず炎症性のマクロファージが増えてしまう。炎症性マクロファージが増えてしまうと、血管の炎症が亢進し動脈硬化の悪化を招くため、これらのマクロファージの比率(バランス)を調節することが慢性炎症の改善には重要だという。

動脈硬化に対する熟成ニンニク抽出液の作用

 熟成ニンニク抽出液がマクロファージのバランスをどのように変化させるか、動脈硬化マウスを使用して検討した結果、同抽出液入りの餌を食べさせたマウスの大動脈では、抑制性マクロファージの数が増加したが、炎症性マクロファージの数が減ることが分かった。

抑制性マクロファージ増加のメカニズム

 抑制性マクロファージを増やすメカニズムがどのようなものかを検討した。炎症性マクロファージが多い状態から、抑制性マクロファージが多い状態に変化させるには、炎症抑制システムを起動することが重要で、STAT3というスイッチタンパク質が起動に関与している。

S1PCがSTAT3の機能を高める

 次に、熟成ニンニク抽出液のどういった成分がこのSTAT3の活性化に作用できるかを検討した。複数の成分を試したところ、S-1-プロペニルシステイン(S1PC)がSTAT3の機能を高めることが明らかとなった。
 実験では、マウス由来のマクロファージ細胞に、炎症抑制システムを誘導する起動剤とS1PCを添加して活性化したSTAT3の量を測定した。炎症抑制システムの起動剤だけでも、STAT3が増加するが、そこにS1PCを一緒に添加することでその機能をさらに強化できることが明らかとなった。
 では、実際に強化した結果、抑制性マクロファージを増やすことができるかどうかを検討したところ、S1PCは抑制性マクロファージの数を増加させることが分かった。

 一方で炎症を促進するマクロファージは、数を減らすことができた。また、炎症抑制システム起動剤とS1PCを添加しておくことによって、抗炎症性サイトカイン(IL-10)の量が顕著に増加することが分かった。一方、炎症性マクロファージから分泌される炎症性サイトカイン(TNF-α)の量はS1PCの添加によって低下させることができることが分かった。
 このように、熟成ニンニク抽出液の成分の1つであるS1PCは炎症抑制システムを強化して、抑制性マクロファージを増やすことで慢性炎症を改善するというメカニズムを明らかにできた。

炎症抑制システムを強化し慢性炎症を抑制

 慢性炎症が起きた組織では、炎症性のマクロファージが優位な状態になっており、この炎症性マクロファージというのは血管の炎症を誘発するサイトカインを数多く放出して動脈硬化の悪化に寄与している。 
 これに対して、熟成ニンニク抽出液やその中に含まれている成分S1PCが、炎症抑制システムを起動するSTAT3というタンパク質を活性化させ、その結果、抑制性マクロファージを増やすことが分かった。

 この抑制性マクロファージは、血管の保護に働く抗炎症性サイトカインの分泌を促進し、動脈硬化の進行を抑制することが明らかとなった。熟成ニンニク抽出液S1PCが、メタボリックドミノの上流に位置する慢性炎症を抑制することが明らかになったことで三木氏は、「今後も、熟成ニンニク抽出液やその成分について、メタボリックドミノの上流の細胞レベルの異常や生理機能に対する有効性を検証し、基礎薬としての有用性を明かにしていきたい」と話を結んだ。

【田代 宏】

関連記事:熟成ニンニク抽出液の有用性(前)

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