消費者庁VS大幸薬品(1)
空間除菌商品の合理的根拠めぐり訴訟へ発展
大幸薬品㈱(大阪府吹田市、柴田高社長)の空間除菌「クレベリン」4商品が20日、消費者庁から措置命令を受けた。取材を進めるにつれ、これまでの経緯とその輪郭が徐々に見えてきた。
訴訟の事実について口を閉ざす消費者庁に対して、大幸薬品は広報を通じて詳細を明らかにした。
同社は2021年11月26日、空間除菌剤「クレベリン」に関する「措置命令案」を消費者庁から示された。そこには、『クレベリン置き型』を含む6商品が対象になるとの記載があった。同社はそれに対して学術論文などの科学的根拠資料を提出して弁明を試みたものの、消費者庁から認められることはなく、消費者庁は措置命令を出す方針を固めた。
そこで同社は12月14日、措置命令の差し止め訴訟を東京地方裁判所に提起、同時に仮の差止の申し立てを行った。
東京地裁で審議が開始され、結果、『クレベリン置き型』の2商品については消費者庁にも提出した試験結果が二酸化塩素による除菌ウイルスの効果の裏付けとなる合理的根拠に当たるとの判断のもと、今年1月12日、措置命令の仮の差止の決定が行われたという。
ただし、他の4商品については認められることはなかったため、東京高等裁判所に対して1月13日に即時抗告を行っている。
ところが消費者庁は同20日、大幸薬品が販売する「クレベリン」4商品の表示が優良誤認を招くとして同社に措置命令を出した。
おおよそここまでは、大幸薬品がホームページ上に掲示している文書に記載のあるとおりである。
大幸薬品にとって腹の虫がおさまらないのは、即時抗告後、1月27日を期限として、高裁に資料を提出してから審議が開始される段取りを整えている最中に、消費者庁が4商品を対象とした措置命令に踏み切った点にあるようだ。
「今回審議が行われる前に(措置命令が)行われたものであり、書面に遺憾ですと記載した。極めて遺憾というのは、この4製品に対してもそうだし、審議が始まる前にこういうことをされるということ自体に非常に遺憾ということ」(同社広報)と述べている。
これについてある法曹関係者は、「東京地裁が4商品に対して仮処分を認めないとの判断を下したのであれば、それは1つの結論。行政庁としては、措置命令を出すことについて、法的な支障はない状態になっていると考えることになる」と述べている。
今後の流れを考えると、いくつかのポイントが浮かび上がる。今回の仮処分の申し立てについて、消費者庁は即時抗告を行っているのか? 行っているとすれば、場合によっては仮処分の取り消しが行われる可能性もある。
また、置き型以外のクレベリン4商品について大幸薬品が即時抗告を行っているため、今後、4商品に対する措置命令の取り下げも考えられる。
そして東京地裁が「合理的根拠がある」とした大幸薬品の根拠資料とはどういうものなのか。同社は、「消費者庁に提出した試験結果等」とプレスリリースで述べている。提出資料と同じものとする空間除菌効果の裏付けとなる根拠資料のレベルはどの程度のものなのか、気になるところである。
【田代 宏】
(冒頭の写真:措置命令の対象となった商品)
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