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消費者庁VS大幸薬品(8) 東京地裁の判断はこうして覆された!

 

 さて、東京高等裁判所はどのような判断を示したのか、以下に紹介したい。

JEM1467は空気清浄機の性能基準

 (Ⅰ)「試験は学術界・産業界で一般的に認められた方法」について、JEM1467は「空気清浄機に関して、業界において統一の基準を定め、一定の試験条件下における空気清浄機のウイルス除去性能を測定し、空気清浄機相互間の性能を比較するためにさだめた自主基準である」、「空気清浄機は一般的に、フィルターにより浮遊するウイルス等を除去する効果を有するものであって、二酸化塩素ガスを除放し、これと浮遊するウイルス等と反応させることにより、これらを除去する効果を有するクレベリン商品とは異なる機序を有するものであること」などを理由に、JEM1467は、「二酸化塩素発生剤の評価試験方法として関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法、又は関連分野の専門家多数が認める方法に当たるものとまでは認められない」との判断を下している。

表示の裏付けとなる合理的な根拠資料とは言えず

 (Ⅱ)「全ての生活環境を再現した実空間試験は不可能」について高裁は、全ての生活空間を再現した実空間試験の実現性等には触れず、閲覧制限がかかっている専門家によるヒアリング記録(甲7:記録では、二酸化塩素濃度が同じであるならば、実際の生活空間と実験空間では大きな差はないと記載されているようである)に言及。同ヒアリングの見解に賛同する医師もいることから、この内容が科学的に誤っているとは直ちには言えないとしたものの、ヒアリング記録のうち、クレベリン各商品の実生活空間におけるウイルス除去機能に関するものは、「ウイルス・菌の除去を左右するのは二酸化塩素濃度であるため、二酸化塩素濃度が同じであるならば、実際の生活空間と実験空間では大きな差はないと考えられること、空間中の二酸化塩素が実際の生活空間においてどの程度効果効能を保てるかについては、はっきりと明言はできないが、二酸化塩素はいずれは自然に分解され、壁に付着した有機物等と反応が起こったりすることで消滅することもあり得るので、ステンレスチャンバー内の空間よりは減少しやすいことなどというものにとどまっており、上記機能について文献等による客観的・具体的な論拠や実証値などを紹介しているものでもないから、本件各商品が実生活空間において前記本件各商品の表示の裏付けとなる合理的な資料ということはできない(決定書52~53P)」と、大幸薬品の提出した資料の合理性を否定している。

湿度30%の生活空間は多数ある

 (Ⅲ)「室内の湿度が30%以下の住宅は全体からすればごく一部」については、「実際に相対湿度30%程度の住宅は多数存在している」、「冬季には加湿をして湿度40%以上に保つことが推奨されている(疎乙35)ことに照らせば、湿度30%程度は実生活において通常想定される範囲内の環境である」としている。
 以上を踏まえ、大幸薬品の提出した資料は、「閉鎖試験空間での一定の条件下における低濃度二酸化塩素ガスによる浮遊ウイルス等の除去等の効果を実証するにとどまり、閉鎖試験空間とは異なる実生活空間における浮遊ウイルス等の除去等の効果を実証するものではない」として、本件各商品の表示に係る効果と、提出資料によって実証された内容が適切に対応しているとは認められないとして、大幸薬品の主張を退け、大幸薬品の敗訴の決定を下した。それを受け、消費者庁は大幸薬品に措置命令を下したのである。

裁判所の判断で見えたものとは?

 大幸薬品は前述したとおり、決定を受け入れた。しかし同社は、「今回やってみて良かったなと思うのが、裁判所の判断を得られたこと。どこまでが合理的根拠になって、どこまでがOKでどこまでがダメかというのがある程度分かった。ここまでだったら、一応、第三者から見ても合理的根拠なのだなというのが分かったことはよかった」(広報部)と話している。これは単なる同社の強がり、やせ我慢なのか?

 実はそうではなく、高裁決定書53~54ページ、および57~58ページに述べられている「閉鎖空間においてJEM1467に基づいて行った二酸化塩素によるウイルス除去効果については、その効果を認める」とする高裁の判断に対する同社の感想である。次回、その一部を引用しよう。

(つづく)
【田代 宏】

(冒頭の写真:左から『クレベリン置き型』60gと150g)

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      消費者庁、空間除菌商品に措置命令
       YouTube動画:「クレベリン」シリーズの措置命令めぐり、消費者庁と大幸薬品が対立

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