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「控訴せず」(新井消費者庁長官) 22年度事業から「製品名」など公表へ

 「機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業」報告書をめぐる裁判で10月4日、東京地方裁判所から一部開示を命じる判決を受けた消費者庁は控訴しない方針を明らかにした。新井ゆたか長官が20日の定例記者会見で語った。

 同裁判は、現在、食の安全・監視市民委員会の共同代表を務める佐野真理子氏が2018年2月に消費者庁に対して報告書の情報公開を求めた裁判。提訴から4年半、今年6月28日に行われた最後の口頭弁論まで、法廷闘争は10回を超えた。

 消費者庁は2015年4月1日~9月30日までの間に届出された機能性表示食品146件、機能性関与成分164成分について、「記載された分析法により、機能性関与成分として届出された成分を定性的に同定可能か(特異性があるか)」、「記載された分析法により、機能性関与成分として届出された成分を定量可能か」、「届出された分析法で第三者が実際に分析可能かどうか」などを調べた。また、17件の機能性表示食品(機能性関与成分6成分)について買上調査をした。
 その結果、半数近い商品に追加資料などを求め、買上調査でも7件について機能性関与成分の含有量が表示値を下回っていた。

 その後、16年11月18日に佐野氏の求めに応じて消費者庁が開示した同報告書を不服として佐野氏(原告)が東京地裁に提訴。「機能性表示食品の名称」、「機能性関与成分の名称」、「検証結果」などの開示を求めたのに対し、消費者庁(被告)は、詳細については企業が不当な不利益を被るなどとして争っていた(行政文書不開示処分取消等請求事件)。

 今回、開示すべき情報とされたのは、「食品ごとの分析方法の評価結果」、「評価結果に対応する製品名」および「機能性関与成分名」の3点。
 裁判所は、報告書に記載のある「対象商品」、「方法」、「検証結果」などについて、消費者庁による監査事務の遂行に支障を及ぼす恐れがある、また、事業者の届出書類に不備があったとの印象を与えることとなり信用を低下させる可能性があるなどとの懸念を示しつつも、「不開示が妥当とされるためには事業者の正当な利益が害される可能性が客観的に認められなければならない」とし、「機能性表示食品制度が個別に消費者庁の事前の許認可等を受けることなく食品の機能を表示できるとの利益を事業者に与えるのと引き換えに、事業者に対し当該食品の販売前に、その安全性及び機能性の科学的根拠等についての一定の情報を開示させることとし、当該食品に関する情報を透明化することによって国民の適切な選択を促すという構造をとっていることも踏まえれば、本件開示請求に当たって懸念される『事業者が開示した情報に不備があったことを国民に知られない』という利益は、まったくもって正当性を欠くとまではいえないとしても要保護性は低く、開示による利益との比較衡量において、その重み付がけが後退することもやむを得ないというべきである」(判決原文ママ)と判決文に述べている。要するに、事業者が事前の許認可を必要とせずに機能性表示ができる利益と引き換えに、一定の情報を開示する必要があるのが機能性表示食品の制度趣旨であるとの判断を示している。

 また、情報開示によって明らかになるのは、すでに市場に流通し分析などをしようと思えばだれもが可能な状態に置かれている機能性表示食品や機能性関与成分の名称であるため、それ以上に詳細な事業者のノウハウや営業秘密にわたる部分は含まれておらず、必ずしも秘密性が高いとは言えない。さらに、検証事業で指摘された問題点は、事後的に補正済みであることが確認されている。したがって「これらを開示することによる利益を上回るほどの事業者の利益を認めることは困難というほかはない。よって、当該部分は『公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある』情報には該当しないものというべきである」(原文ママ)としている。すなわち、以上の趣旨を踏まえれば、判決で開示すべきとされた検証結果の情報を開示できないという事業者の要望は受け入れがたいということである。

 6日の記者会見で「(個人的に)重い判決と考える」と述べた新井長官はその後、関係行政機関と協議の上、控訴を断念したことを今回の会見で発表した。判決内容の趣旨を踏まえた上で、今年度実施予定の検証事業からは、ただ単に評価結果を公にするのではなく、対象製品名や機能性関与成分などの評価結果を踏まえた届け出事業者の対応も含めて公にし、「機能性関与成分の分析方法の検証に関し、より透明性の高い運営を図る方向で検討していきたい」と述べた。

 一方、原告側は今回の決定を不服として、10月17日に控訴している。

【田代 宏】

関連記事:機能性表示食品報告書の開示請求訴訟、第4回弁論開く
    :「機能性表示食品」訴訟の第5回弁論開く

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