消費者庁が「No.1表示」実態調査 客観性に欠ける「ナンバーワン」広告を是正へ
消費者庁が「ナンバーワン」(No.1)表示の実態調査に乗り出す。客観的な調査方法に基づかないNo.1表示を行う広告が横行していると見て、健全化に関与する必要があると判断した。No.1表示のサンプル収集調査なども含めた実態調査を踏まえ、景品表示法上問題となるNo.1表示の考え方を同庁として提示し、事業者や一般消費者に注意喚起したい考え。調査結果は今秋にも公表する。調査結果は、不適切なNo.1表示の規制を目的とする指針として示されることになりそうだ。
同庁の新井ゆたか長官が21日に行った記者会見で明らかにした。
会見で新井長官は、「特に問題にしたいのは(満足度や使い勝手などの)印象を問うNo.1表示」だと述べ、そうしたNo.1表示を中心に実態調査を行う方針を明言。「(印象を問うNo.1表示は)そもそも客観的なデータを得ることが難しい。その中で、調査をしてNo.1だと言う。そこには二重の意味で客観性に疑義が生じることになる」と指摘した。
商品やサービスの広告で根拠に欠けるNo.1表示を行っていたなどとして行政処分を受ける事業者が相次いでいる。消費者庁によると、今年度は現在までに9件14社が処分を受けた。処分の根拠は景表法違反が大半だが、今月、健康食品の通販会社が、通販の誇大広告を禁じる特定商取引法の規定違反で3カ月間の業務停止命令を受けている。
同庁によると、No.1表示は調査会社が広告主に働きかけて行われている場合が多い。「広告主が調査会社に対して適切な調査の設計を依頼しているのだろうか、(調査会社から報告された適切でない調査結果を)鵜呑みにしていないだろうか」(新井長官)と疑問視する。だが、違反を問えるのはあくまでも違反表示を行った広告主で、調査会社に対する直接の法的措置は行えない。
No.1表示実態調査では、調査会社も含めた事業者や事業者団体のヒアリング、No.1表示に対する消費者の意識調査、実際にNo.1表示を行う広告のサンプル調査を行う。新井長官は会見で「どのような根拠に基づいてNo.1表示を行っているのか実態を調べたい」と述べた。
客観的な調査に基づかないNo.1表示は以前から存在していたが、同庁では、「イメージ調査に基づくNo.1表示は最近の傾向だ」(表示対策課)と話す。No.1表示をめぐって国は、景表法を公正取引委員会が所管していた2008年、客観的な調査に基づいていることと、調査結果を正確かつ適正に引用していることの両方を満たす必要があるなどとする考え方を示している。
【石川太郎】
(冒頭の写真:No.1表示実態調査実施を記者会見で伝える消費者庁の新井ゆたか長官)