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消費者庁、機能表示制度見直し検討か 審議官、「リスクある届出制に安住していいのか」

 消費者庁の依田学審議官(食品担当)が先ごろ、都内で健康食品関連事業者に向けた講演を行い、同庁で制度所管する機能性表示食品について、見直しを検討していることを示唆する発言を繰り返した。国が関与する許可制、あるいは国として定める規格基準を導入する必要性を繰り返し強調。機能性表示食品をめぐる先の措置命令を引き合いに出し、国の非関与を原則とする届出制の機能性表示食品には、事業者のビジネス上のリスクが付きまとうと説いた。「(先の措置命令と)同じことが繰り返されないとは限らない」という。

措置命令で危機感か 国の関与求める 

 「永続的にこの制度(届出制の機能性表示食品制度)に安住していいのか」。機能性表示食品の科学的根拠に踏み込むかたちで不当表示を認定した、先の景品表示法違反(優良誤認)事案を引き合いに出しながら依田審議官はそう問題提起。行政が関与しない事業者責任の機能性表示食品は、「景品(表示)当局が常に監視している」と指摘した。

 行政が関与していないものは、取締り当局としても手を出しやすい、との認識も示した。同一の届出表示(ヘルスクレーム)と科学的根拠を届け出ている場合が多い機能性表示食品では、差別化のために、広告で違いを出そうとする事業者が少なくないと考えられることを念頭に置いた発言とみられる。1社でも景表法違反で処分されれば、同じ科学的根拠を届け出ている事業者が「一網打尽」にされる恐れがある、とした。

 また、厚労省が担当する健康・栄養政策において健康食品は、「過度な期待が持たれている訳ではない」と述べ、そうした「政策」の上では、健康食品は重要視されていない現実を「ベースとして押さえておく必要がある」と指摘。そのため、取締り当局としても手を出しやすい、と言いたかったとみられる。

規格基準型トクホの枠組み使う?

 届出制に安住すべきではないと考えている理由は他にもある。ヘルスクレームを行う加工食品などの海外輸出を国として支援するにしても、「当局同士で(ヘルスクレームを)許可しているものについてはお互いで相互認証する、という交渉ができる」一方で、届出制では「通用しない」と依田審議官。「安定的なビジネスのためにも、行政にもう少し関与させてもらえるような制度設計をこれから議論させていただきたい」と呼びかけた。

 国が関与する許可制の特定保健用食品(トクホ)を推進したい考えがあるとみられる。依田審議官は、「トクホをもっと身近なものにしていきたい」と述べた上で、トクホのうち「規格基準型」を広げる方向性を示した。ヘルスクレームと科学的根拠の関係が固まっていたり、機能性表示食品として届出件数の多かったりする機能性関与成分について、有識者の判断を仰ぎながら国として規格基準を定め、規格基準型トクホに組み込んでいく考えがあることをにおわせた。

 消費者庁は来年度、予算を使い、保健機能食品制度の改善に向けた調査研究を実施したい考え。依田審議官によれば、欧米をはじめ中国やASEAN(東南アジア諸国連合)など諸外国のヘルスクレーム制度の調査研究を計画している。

来年度以降の消費者庁、「安全性と有効性をセットで考える」

 依田審議官は今月4日、健康食品業界団体の(一社)健康食品産業協議会(橋本正史会長)が主催するセミナー(東京ビッグサイト「食品開発展2023」内)に出席し、「保健機能食品の現状と今後」をテーマに講演。産業協議会の分科会長らとのパネルディスカッションにも臨んだ。セミナーテーマには措置命令が含まれること、依田審議官が出席することが事前に告知されていたほか、開催直前の9月29日に届出ガイドラインの一部改正が通知、施行されたこともあり、業界関係者から大きく注目された。セミナー会場に用意されていたおよそ100席はまたたく間に埋まり、会場の外にまで立ち見が溢れる状態となった。少なくとも180人以上が聴講した。

 依田審議官はこの日、厚生労働省が現在所管する食品衛生基準行政が来年度、同庁へ移管されることにも言及。機能性表示食品などの保健機能食品について「安全性と有効性をセットで考える組織に(同庁は)なる」と発言した。行政移管によって、健康食品に関連する指定成分等含有食品制度も所管することになる消費者庁は今後、「『ミニ厚労省』のようなかたちになる」とし、健康食品全般の安全性確保も念頭に食品衛生基準行政を進めていく考えを示した。

 「安全性と有効性をセットで考える」とする姿勢は、依田審議官とともにセミナーに出席した、同庁食品表示企画課保健表示室の今川正紀室長も鮮明にさせた。「表示を広げることだけに注視するのではなくて、そこ(ヘルスクレームの拡充)は安全性とセットでなければならない」と述べ、機能性に関する科学的根拠があるだけでは表示の幅は広がらない、と説いた。

 今川氏は、元厚労省食品基準審査課新開発食品保健対策室長。健康食品産業が健全に発展していくためには、安全性と有効性をセットで考えていく必要があるとの考えを以前から示していた。

【石川太郎】

(文中の写真:依田審議官らが出席した健康食品産業協議会主催セミナーの様子)

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