消費者庁は9月29日、機能性表示食品の届出ガイドラインの一部改正を行った。6月に示していた改正案のとおり、科学的根拠として多用されている研究レビュー（SR）について、SR報告に関する国際指針「PRISMA声明（2020年）」（以下、PRISMA2020）の準拠を原則とする。そのためPRISMA声明チェックリストや別紙様式などの改正を行った。PRISMA声明は、2015年の機能性表示食品制度施行後の2021年、旧版に当たる「2009」から現行の「2020」に更新されていた。

　PRISMA2020準拠の経過措置期間についても、案からの変更はない。新規の届出は2025年4月1日以降から、既存届出は「随時」、PRISMA2020に準拠したSRの提出を求める。既存届出については、SRの見直しを随時行い、準拠したSRの変更届出の提出を求める。25年4月以降、準拠状況を、消費者に情報提供していく考えだ。

パブリックコメント結果も公表

　改正案のパブリックコメント結果も同日公表した。31件の意見が寄せられた。PRISMA2020準拠に対する意見が多かった。既存届出について、急を要する場合もある、表示見本などの変更届出を行う場合のPRISMA2020準拠への対応も問われた。この点は、SRに関しては「様式変更のみの変更届出は要さない」と整理した。ガイドラインが改正されて別紙様式の変更があった場合、表示見本などについて変更届出を行う際には、記載内容に変更がない別紙様式も含めて最新の様式に変更する必要がある。このルールに従えば、これまではSRについても、PRISMA 2020に準拠した最新様式での変更届出を行う必要が生じた。

　また、既存届出と同一性が失われていないものを届け出る「再届出」のPRISMA2020準拠の経過措置期間は、新規届出と同様にする。その変更届出についても、SRなど機能性に係る事項に関しては新様式を用いる必要はない、と整理した。

　PRISMA2020に準拠したSRに更新する事業者の負担は小さくない。相応の準備期間も必要になる。そのため準拠したSRの変更届出期日を設けるなどの規制は避けた。ただ同庁は、事業者責任で食品の機能性を表示する制度の趣旨を踏まえ、「届出後においても科学的根拠について新たな知見が得られた場合はその内容を届出資料に反映していただくことが望ましい」としている。機能性表示食品の科学的根拠をめぐる措置命令が起きたことも踏まえ、届出資料の見直しを「随時」行うよう、事業者に求めていく考えだ。

届出内容、責任の所在を明確化

　大きな改正点はほかに、「届出資料作成に当たってのチェックリスト」（別紙様式2添付ファイル用）に届出者の代表者による確認欄を新設した。届け出た内容に対する責任の所在を明確にする目的がある。また、最終製品を用いたヒト試験の事前登録について、特定保健用食品の事前登録の規定に準拠することを求める。登録情報の公開について、これまでは登録から1年を超えない日に設定できるとも読める書きぶりにしていたが、これを改めた。登録情報の公開は、登録先のルールに従ってもらう。他にも大小の改正点がある。

事前確認経た届出の「30日」ルールを撤廃

　届出ガイドライン改正に合わせて質疑応答集の一部改正も行った。ガイドラインの改正点に関する考え方を補足説明する項目を新設するなどした。

　他に、事業者団体の事前確認を経た届出の取り扱いに関する記述を削除した。これまで行ってきた、30日以内に公表、あるいは差し戻す運用を廃止するという。一時、事前確認を経た届出の確認期間を最終的に「ゼロ日」とすることを目指し、体制の構築を模索していたが、立ち消えとなった。事前確認を経ていない届出は受付日から起算して50日以内、再届出の場合は30日以内の対応を目標とする運用は変えない。

　また、事前確認を行う事業者団体とは「どのような団体を指すのか」の設問に対する回答の書きぶりも改め、「届出資料作成の助言等を行っている団体等を想定している」とした。これまでは「ガイドラインに則した事前確認を適切に実施できる体制が構築されていることを消費者庁が確認した団体」と説明しており、条件を緩和したとみられる。事前確認を担う団体は現在、（公財）日本健康・栄養食品協会と（特非）日本抗加齢協会の2団体のみ。

【石川太郎】

（冒頭の写真：届出ガイドライン一部改正を都道府県等に伝える消費者庁食品表示企画課長通知）

○関連資料：改正届出ガイドライン関連（消費者庁等のホームページへリンク）
【改正届出ガイドラインの全文】
・新旧対照表（1）
・新旧対照表（2）
【改正質応答集（Q＆A）全文】
・改正質応答集（Q＆A）新旧対照表
【届出ガイドライン改正案のパブリックコメント結果】