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原原表示、4月1日から完全施行へ
消費者庁が表示実態調査結果を公表 元食品表示Gメンが検証

 原料原産地表示制度の完全施行を目前に、消費者庁が2021年度「新たな加工食品の原料原産地法事制度等に係る表示実態調査結果」を公表した。2019年に始めて今年で3度目。
 調査項目は、①加工食品の原料原産地表示の有無、②原料原産地表示の根拠法令等、③新たな原料原産地表示における商品の表示方法、④アレルゲン表示の視認性向上に関する取組状況。
 これらの調査結果から読み取ることのできる情報について、元農水官僚で食品表示Gメンとして活躍した中村啓一氏に見解を求めたので以下に紹介する。

中村氏「調査は昨年7月、現在とは状況が異なる」

 「2017年9月、食品表示法に基づく「食品表示基準」が改正され、全ての加工食品に原料原産地表示が義務付けられました。新ルールへの移行期間は本年3月31日までであり、4月1日以降に出荷される加工食品は新ルールに従う必要があります。

 加工食品については、以前から乾燥した野菜類や塩蔵魚介類など加工度の低い22食品群と農産漬け物、野菜冷凍食品、うなぎ蒲焼き、かつお削り節の4品目に原料原産地表示が義務付けられており、新ルールは、それ以外の輸入品を除く全ての加工食品に、重量割合上位1位の原材料について原料原産地の表示を義務付けています。

 3月28日、消費者庁が『令和3年度 新たな加工食品の原料原産地表示制度等に係る表示実態調査結果』を公表しました。同調査は、昨年7月にスーパー店頭の商品について実施されたもので、移行期間終了間際の現在とは状況が異なりますが、加工食品の原料原産地表示の傾向を知ることができるでしょう。

 調査によると、加工食品1,454商品中、1,122商品に原料原産地表示があり、表示実施率77.2%としていますが、表示されている230商品は食品表示法や米トレーサビリティ法などにより従前から表示がされており、新ルールによる表示は892商品(実施率72.8%)となっています。4月以降も消費期限を考えると、しばらくは新ルールへの移行が遅れている商品が混在することになります。
 
 原料原産地表示のルールは複雑です。重量割合上位1位の原材料が生鮮食品の場合は産地を、加工食品の場合は製造地を国別重量順に表示することを原則に、または表示や輸入などの大括り表示等が認められます。

 調査は、新ルールにより表示された892商品中、282商品(31.6%)に産地表示、610商品(68.3%)に製造地表示が行われていたとしています。製造地表示は、小麦粉、砂糖、植物油、醤油など、加工食品を主要原料としている場合に「国内製造」などと表示されます。消費者への情報としての価値には疑問がありますが、このような表示が多くなることは予想されていたことです。

 なお、食品表示法は加工食品の原材料と添加物を区別しており、重量比で添加物の使用料が一番多い場合においては添加物以外の重量の一番多い原材料について表示し、添加物だけで構成されている食品は表示義務がないので注意が必要です」

<中村啓一氏プロフィール>
1968年農林水産省 入省(主に、食品産業・食品流通関係行政を担当)
2001年   近畿農政局 企画調整部 消費生活課長
2003年4月 総合食料局 消費生活課 企画官
2005年4月 消費・安全局 表示・規格課 食品表示・規格監視室長
2009年1月 総合食料局 食糧部 消費流通課長
2011年 8月 農林水産省 退官

<著 書>
『食品偽装・起こさないためのケーススタディ』共著(ぎょうせい)2008年
『食品偽装との闘い』(文芸社)2012年

 近畿農政局時代にBSE、牛肉偽装問題を担当、以来10年にわたり食品表示の監視業務に携わり、さまざまな食品偽装を摘発。2008年の事故米不正流通ではチーム長として、事故米の流通ルートの解明を担当した。公務員として、東日本大震災被災者への食料支援が最後の業務となった。
 同氏は4月27日、都内で原料原産地表示セミナーを開催する予定。

(冒頭の写真:中村 啓一 氏)

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