消費者団体に大手飲料会社の回答相次ぐ(後) サントリーフーズ(利用規約)、キリンビバレッジ(返金)
特定適格消費者団体の(特非)消費者支援機構関西(ケーシーズ、大阪市中央区)は1日、キリンビバレッジ㈱が販売する『トロピカーナ 100% まるごと果実感 メロンテイスト』の表示に関する意見交換の結果を公表した。1月6日に同社から回答書を受け取ったとしている。
キ社は2022年9月6日、同品を販売するに当たり、「厳選マスクメロン」、「Tropicana® REAL FRUIT EXPERIENCE まるごと果実感」、「100% MELON TASTE」などと表示。あたかも同品の原材料の大部分がメロン果汁であるかのような誤認を消費者に与えていたとして景品表示法に基づく措置命令を受けた。今年1月18日には1,915万円に上る課徴金の支払いも命じられている。
ケーシーズはキ社に対し、消費者が誤認して購入したことによる財産的損害を回復すべきとの観点から、同社に対して「お問合せ活動」を行っていた。措置命令の対象となった商品には、メロン果汁が2%程度しか含まれていなかった点を重く見て、以下のとおり、対象商品の販売個数や売上高、さらに返金の意思、返金条件などの8項目にわたり問い合わせを行った。
<お問い合わせ事項>
1.本件対象商品の出荷個数から返品個数を引いた実質的な販売個数
2.「1.」の内、貴社が一般消費者に直接販売した個数及びその売上高
3.「1.」の内、貴社が把握可能な、該当商品を購入した一般消費者の人数及びその売上高(第三者を通じて売却した場合であっても、貴社が把握可能な場合を含む。)
4.本件対象商品について、消費者に商品代金を返金する意思の有無
5.「4.」について返金意思がある場合
(1) 返金条件
①対象者(上記「2.」に限定するか等)
②本件措置命令記載の貴社の表示・広告(以下「本件表示」という。)内容によって誤認したことを条件とするか
③「②」について条件とする場合、返金対象となる誤認の内容
④代金支払に関する対象消費者の立証手段の要否及び内容
⑤対象者が請求可能な期間
⑥返金の範囲(全額返金若しくは部分返金の場合はその割合)及び返金手段
⑦その他関連事項等
(2)「(1)」について、公表の有無、公表する場合の内容及び公表手段
(3)「(1)について、「3.」に該当する一般消費者に対し、個別通知の実施の予定の有無及び内容
6.「4.」について返金意思のない場合、その理由
7.景品表示法10条所定の返金措置の実施の予定の有無
8.本件表示により本件対象商品の内容を誤認した消費者の想定数に対し、貴社の実施する返金が相対的に少額にとどまった場合(対象者が商品購入の事実を証明できない場合等を含む。)、貴社は違法な表示・広告により不当な利益を得たとの評価もあり得るところです。これらの利益について保持しないための措置(例えば、貴社商品購入者(本件商品の購入者に限らない。)への還元や、第三者への寄付等を行う。)の予定の有無について。
以上、ケーシーズのホームページより
これに対してキ社は、実質的な販売個数を451万7,076本とし、一般消費者へ直接販売した実績は「なし」とした。
また、今回の措置命令を真摯に受け止め、消費者庁の命令に従い「商品のパッケージの表示が景品表示法に違反するものであったことを一般消費者に周知徹底することによる誤認排除措置、再発防止策の実施、役員および従業員への周知徹底を行ってきた」と回答。ただし、商品代金の返金、景品表示法第10条(返金措置の実施による課徴金の額の減額等)の規定に基づく消費者への返金措置については実施の予定はないとしている。
キ社の回答に対し、ケーシーズはいくつかの見解を述べている。
売上高の3%を目安とされる課徴金について「違法な表示等による販売促進効果が3%を上回れば、同社には違法な表示等により生じた利得が残る」とした上で、課徴金はあくまで国庫に帰属し被害者の救済には充てられない。
消費者裁判特例法による被害回復訴訟の対象となるが、商品小売価格が1個当たり数百円の商品被害だと、裁判手続を利用した場合に費用倒れになるため提訴は困難。
これらのことから、可能な被害回復や、違法な活動により生じた利得を残さないための施策実現のためにキ社に対策を再考することを求めるとともに、違法な表示により被害を受けた消費者の被害回復に資する制度のさらなる整備が不可欠と訴えている。
(了)
【田代 宏】
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