消費者団体「知らない」76.9%、制度「知らない」62.8%~裁判手続き特例法検討会
消費者庁は22日、第2回「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」をウェブによるオンライン形式で開催した。
一橋大学大学院法学研究科教授の山本和彦座長を中心に、消費者支援団体や法曹界の専門家9人が検討委員として出席している。
特定適格消費者団体「消費者機構日本」(COJ)は、「被害回復業務の改善アンケート 調査結果」を報告。アンケートは2月18日~28日の期間、東京医科大入学検定料等返還訴訟で簡易確定手続きに関わる通知を行った対象消費者627人のうち、アンケート協力に許諾した65人を対象に行われた。また、アンケート実施に当たり、アンケート項目設定、集計、グラフ化について消費者庁の協力を得た。
<SNS活用した広報も>
調査結果によると、消費者団体訴訟制度の認知度については、23.1%が「今回の事案が発生する前から知っていた」と回答したのに対して、76.9%が「今回の事案が生じるまで知らなかった」と回答した。特定適格消費者団体の認知度については、26.2%が「すでに知っていた」としたのに対して、73.8%が「知らなかった」と回答したとしている。認知経路については、新聞やテレビなどが最も多く、今後認知度を高めていくために、SNSなどを活用した広報を進める必要があるとした。
<東京メトロの車内広告で宣伝>
消費者庁は、「消費者団体訴訟制度の現状と課題」について報告した。消費者庁としては、一般消費者や消費生活センター向けに、広く消費者団体訴訟制度のパンフレットを配布、東京メトロの車内広告で制度を宣伝、第1段階の判決が確定した場合に、消費者庁ホームページやSNSで個別事案を周知しているなど、現在の取り組みについて説明した。
今後の課題として、同制度や適格消費者団体の具体的な役割が明確に理解されていない現状を踏まえ、消費者目線での周知・広報活動のあり方、共助社会における財政的な支え方、消費者にとっての参加しやすさについて、検討する必要があるとした。
<制度そのものの周知に限界も>
東京大学社会科学研究所の飯田高教授は、「消費者団体が、訴訟等により事業者の不当な行為をやめさせる、あるいは、被害金額を取り戻すことができる制度があること」について、一般消費者の62.8%が「知らなかった」と回答していると指摘。「制度そのものを伝えるだけでは実際の利用には結びつきがたい。具体的な事例の蓄積と周知ができると良い」と話した。
消費者庁の伊藤明子長官は、「引き続き議論を重ね、制度に不足している部分を補足していく。消費者保護の観点から、団体の役割を明確にすると同時に、団体との連携を強化する必要がある」と話した。
【藤田勇一】