浅野行蔵氏、雪印集団食中毒事件をテーマに講演
(株)ウェルネスニュースグループ(東京都港区)は22日、新たに導入されるHACCP制度に関するセミナーを都内で開催した。北海道大学大学院名誉教授で旭川食品産業支援センター長の浅井行蔵氏が、雪印集団食中毒事件をテーマに講演した。
2000年6月に発生した雪印集団食中毒事件直後、北海道の大樹工場で講演した同氏は、「ミルク工場でパイプラインの中を運搬されるミルクに人の手が触れる機会はない」とし、それにもかかわらず、長靴をきれいにしたり、必要以上に手洗いをしたりする従業員に「余計なことをやらされ過ぎている」という違和感を持ったと振り返った。当時の写真を示しながら、膨大な記録が残されていたため、事故を起こした飛行機のボイスレコーダーとしての価値はあったものの、結局、事故は避けられなかったと指摘。その原因と対策について解説した。
HACCPには(1)危害要因分析の実施(HA)、(2)必須管理点の決定(CCP)、(3)許容限界の設定(CL)、(4)モニタリング、(5)是正措置の設定、(6)検証、(7)記録の7原則があるが、まず重要なのは(1)と(2)と(3)とし、その理由をHACCPが確立される歴史的な背景に基づいて解説した。特に原則(1)は最重要とし、トーナメント方式の競技にたとえて「(1)がクリアされなければ後はない」と強調した。
同氏は、HACCPと衛生管理は異なった概念であると説明。例を挙げて、油や湯などで高温加熱する中華料理はHACCPの概念を実行しているが、安全を衛生管理に頼っている刺身は、汚染菌を殺すCCPは介在しないため、全ての工程が衛生的でなくてはならない料理であると述べた。
「HACCPでは記録は『うんこ』。人は『うんこ』を作るために食事をするのではない。正しい食生活をしていれば自然と良い『うんこ』が出る。HACCPの記録も同じ」と話した。「厚生労働省が用いた『衛生管理』という表現が誤解を招いているのではないか。食品の安全管理と言った方がわかりやすい」と提言した。
【田代 宏】