沖縄のヘルスケア産業を展望する~コロナ禍への挑戦(前)
昨年の過去最高の観光客数の流れを受け、今年も大いに盛り上がりが期待された沖縄県。健康ブームによる沖縄の伝統的な食文化の見直しもあり、沖縄県のヘルスケア産業界は新たなステージへの変換が期待された。そうしたなかの新型コロナウイルス感染症の拡大。県内は観光産業を中心に大打撃を受け、新たな事業転換が求められている。ヘルスケア産業界の現状と今後の展望をレポートする。
<生き残りをかけた対応が求められる>
県内にはかねてから、「沖縄産と付くだけで何でも売れる時代があり、その古い感覚で商売できると考える事業者がいる」、「そもそも沖縄はマーケティングが下手で、物産展やお土産店に置けば売れるという古い感覚も残る」といった声があった。実際、国内外からの観光客が年々増加し、その恩恵を受けていた事業者は多い。
そうしたなかでコロナ禍がもたらした異常事態。新たな業態への転換や、ニーズを先取りした商品開発、販売チャネルの変更などの対応が急がれる。ある事業者によると、「沖縄の観光業界は地元・国内顧客にシフトチェンジしている。お土産店から業態を変更し、地元の人が行きたくなる五感で体験するような観光施設を目指し、施設のリニューアルを行う」という。
ナゴパイナップルパークをはじめとしたテーマパーク事業を展開する名護パイン園グループは9月下旬から、被害を受けている生産農家を応援する、自社の利益を度外視したキャンペーン「ゆいまーる」(沖縄の方言で助け合う、一緒に頑張ろうの意味)を展開している。
<自社の強みを生かし、コロナ後を見据えた動きも>
久米島で化粧品OEMを行う(株)ポイントピュール(沖縄県久米島町)は、観光客が増えつつある時期に、県内のホテル向けにアメニティを提案してきたが、コロナ禍でいったんストップを余儀なくされた。その一方で、沖縄の地域性やストーリー性をコンセプトにした化粧品「リゾートコスメ」を新たに開発した。国内に市場を持つ、国内の化粧品通販事業者からの引き合いが強いという。海外は台湾からの問い合わせがあり、12月ぐらいから動けるよう準備を進めている。
大阪に本社を置く化粧品・医薬部外品のOEMを手掛ける(株)ミリオナ化粧品(大阪市北区)は、18年3月に沖縄に進出。県内の農業生産法人と共に化粧品・健康食品の原料となる天然物の試験栽培を行う。来年に向けて有用な素材を上市できるよう取り組んでいる。
(つづく)
【藤田 勇一】