次期「健康・医療戦略(案)」、新たな機能性表示の実現など
<来年2月に策定>
政府は14日、2020年から適用する「健康・医療戦略」の案を公表した。今月27日までの期間、パブリック・コメントを募集する。来年2月に策定する計画だ。
次期健康・医療戦略は、2020~24年度までの5年間が対象。政府の健康・医療に関する先端的研究開発と、新産業創出に関する施策を総合的に推進するための計画となる。
案では、新産業創出に向けて、「健康な食、地域資源の活用」に関する4項目を盛り込んだ。その1つが、食品の機能性表示に関する施策。「機能性表示食品等について科学的知見の蓄積を進め、免疫機能の改善などを通じた保健用途における新たな表示を実現することを目指す」方針を示した。
また、「健康に良い食」を科学的に解明し、ヘルスケアサービスに連結したビッグデータを整備する方針としている。これにより、「健康に良い食」の高度な生産流通システムの実現を目指す。
薬用作物の産地形成の加速化、地場産農産物の介護食品への活用支援も盛り込まれた。地域資源を活用した商品・サービスの創出と活用の推進を目的とする。
4つ目として、管理栄養士などが参画し、適切な栄養管理を行う「健康支援型配食サービス」の地域展開への支援を挙げた。
<乳酸菌などの免疫機能改善による効果、現時点では科学的根拠なし>
【解説】
新たな機能性表示を目指す施策は、政府の統合イノベーション戦略推進会議が今年6月に策定した「バイオ戦略2019」で示された。これを次期健康・医療戦略(案)に反映させたかたちとなった。
バイオ戦略2019では、「機能性表示食品等については、本年度より4年間で科学的知見の蓄積を進め、免疫機能の改善などを通じた保健用途における新たな表示を実現することを目指す」としている。4年の間に、科学的根拠(エビデンス)が蓄積された場合には、免疫機能改善などによる新たな機能性表示の可能性を検討する考えだ。
しかし、現在のところ、食品成分や乳酸菌などの免疫機能改善による効能効果については、信頼できる科学的根拠は見当たらない。販売企業による研究データは存在するものの、そのほとんどが、NK細胞やs-IgA(分泌型免疫グロブリンA)といった限定的な指標を評価して、免疫機能改善を通じた効能効果が認められたとする内容。これらは、非科学的な面を否定できない研究結果であり、機能性表示食品制度の趣旨に反している。
また、免疫機能改善による効能効果を国が安易に認めた場合、保健機能食品の範囲から外れたところで、インフルエンザ予防、アトピー性皮膚炎やガンの改善といった効果を暗示する広告宣伝が勢いづくのは確実。12月に入り、大手メーカーによる免疫力向上をうたった乳酸菌の広告が目立つようになったのも、インフルエンザ・風邪予防の効果の暗示が目的だ。
このような状況下、免疫機能改善を通じた効能効果の表示を国が認めた場合、科学的根拠に基づかない広告宣伝が横行。その結果、適切な医療を受診する機会を逸失したり、経済的被害を生じさせたりする消費者が増加する。免疫機能に関する表示については、極めて慎重な議論が求められそうだ。