機能性表示食品めぐる覆面座談会 （後）【課題と展望】業界関係者が本音で語る憂いと期待
2022年夏、都内某所に集った業界関係者。思想や信条はそれぞれ異なれど、業界の現状に対して一言も二言もある人物が顔をそろえ、機能性表示食品の現状について虚心坦懐に語り合った。健康食品産業の未来に対し、憂いと期待が入り混じった複雑な感情を抱く彼らは、認知機能表示の一斉監視・行政指導や民間団体での届出事前確認など、直近で立ち上がった小さからぬ出来事をどう見ているのか。覆面で包み隠さず語る。
座談会メンバー
司会=ウェルネスニュースグループ 田代 宏
A氏=メーカー役員（60代）
B氏=OEM企画会社経営（50代）
C氏=コンサルタント（40代）
制度が業界を成長させた しかし課題はまだまだ
司会 最後に、機能性表示食品制度の施行から丸7年が経過した今、この制度は日本の健康食品市場の健全な発展につながっていると思いますか？ 今後の展望も含めて聞かせてください。
A氏 そもそも機能性表示食品制度が創設された背景には、いわゆる健康食品を排除したいという行政側などの思惑もあったでしょうから、届出総数がすでに5,000件を突破していることを踏まえると、その目的に向かって少しずつ進んでいるのだとは思います。一方、そうした行政などの思惑とは別に、機能性表示食品として届け出ることが健康食品を販売してくための必要条件に近づきつつある現状を見ると、やはりこの制度は、健康食品市場や業界を大きく進歩させたのだと思います。原料メーカー、受託メーカーも制度の恩恵は受けているはずです。
B氏 私は、生鮮食品を制度対象に加えたことが正しい判断だったのかどうか、疑問に思い続けています。生鮮食品だと機能性関与成分がデータより少ない含有量でも許され、販売期間が試験期間より短くても構わないのはダブルスタンダードだと言えませんか？
A氏 確かに、ミカンを年中食べることは難しい。その意味では、生鮮食品の中でもバナナなどはまだ許容範囲だと思いますが、毎日摂取することが困難な食品をサプリメントなどと同じ器、つまり制度に乗せることに無理があると感じますよね。
B氏 この野菜には、このような機能性を持つ成分が含まれている、ということを消費者に認知させること自体は良いと思いますが、その成分が含まれるということだけをもってその成分の効果を期待させるようなやり方はどうなのか。サプリメント形状だけでなく、ガムやグミなども含め、エビデンスに基づく量の機能性食品成分を継続摂取できる形状こそが、機能性表示食品にふさわしいのではないかと思います。
機能性を表示する制度はできた 次は安全性・品質に関する制度を
C氏 私は、「届出受理」という表現が今でも普通に使われていることが気になっています。確かに受理という言葉には幅広い意味があって、単に「受け取りましたよ」という場合にも使われますが、こと機能性表示食品の届出に関して「受理」と言うと、どうしても許認可の感じが醸し出される。だからあえて「受理」と言っている事業者もいそうです。このあたりが、機能性表示食品は届出が通りさえすればそれでいいと勘違いしてしまう事業者がいなくならない根本的な原因ではなかろうかと感じます。本来、本当の勝負は「受理」された後に始まるはずなのですが。
A氏 日本人は案外、お上から規制されることで初めて安心できるのではないですか？ だから実は事業者責任とか届出制とかに向いていない面があるように思います。その意味で、事業者責任に基づく届出制でありながら、消費者庁によって届出内容が実質的には審査されてきたからこそ、機能性表示食品はここまで大きく広がったのかもしれません。民間団体での届出事前確認制度が始まった後どうなるか。少し怖い気もします。
B氏 規制という意味では、医薬品との相互作用の確認や品質管理を含めた安全性の担保といった面を、もっと厳しくするべきだと思います。届け出た商品そのものとしての安全性をどのように担保しているのか。トクホのように、最終製品としての安全性が許認可されているわけではないのですから、そこは行政としてもですが、業界各社、各業界団体としてもプライドを持って厳しくチェックすべきです。それをしなければ、品質管理や安全性に関して、いわゆる健康食品とほとんど何も変わらないことになります。それだと機能性表示食品であることの価値が担保されません。ですから、サプリメントという名称を使うかどうかは別として、医薬品と食品の間のカテゴリーを制度化する必要があると思っています。その制度に中に機能性表示食品は組み込まれるべきです。
司会 ありがとうございました。
（了）
【編集部】
