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機能性表示食品に無処置RCTを推奨 唐木東大名誉教授、ウェッジ・オンラインで提言

 健康食品を開発する時の試験法は今のままでいいのか? 東京大学名誉教授の唐木英明氏は「ブームに沸く健康食品は本当に効果があるのか」と題して、機能性表示食品の届出に採用されているプラセボ対照RCT試験について、必ずしも適切ではないと指摘する文章を17日『Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)』に投稿した。

プラセボ対照RCT試験が抱える構造的問題

 国が効果を審査して許可するトクホ(特定保健用食品)に対して、企業が効果を示す論文を添えて届け出るだけで効果を表示できる機能性表示食品は9月17日現在、届出公開件数が累計5,812件(内撤回573件)に達している。トクホ制度が発足したのが1991年のこと。それに比べて、機能性表示食品制度は発足からわずか8年足らずに過ぎない。

 唐木氏は、急速に製品が増えている理由について、「トクホはヒト臨床試験による国の厳しい審査を受ける必要があるのだが、機能性表示食品は効果があるというヒト臨床試験の論文1報を提示すればよく、国の審査を受ける必要はないという簡便さのため」と説明。この簡便な届出制度の盲点となっている根拠論文の科学的質の低さを批判したのが、技術系メディアの『日経クロステック』だったと紹介している。
 「同メディアの批判は的を射ている」としながらも、現在、機能性表示食品の有効性試験として全面採用されているプラセボ対照RCT試験が抱える構造的な問題がその背景にあることについて解説している。

ウェルネスニュースグループでも対策セミナー

 日経クロステックの批判記事については14日、ウェルネスニュースグループでも対策セミナーを開催した。同セミナーで唐木氏は、主に健常者を被験者とする食品の試験において、プラセボ対照RCT試験では薬理効果よりも心因作用の方が大きいために「有意差がつきにくい」として、期待する効果によっては同試験の採用は適切ではないと指摘。
 「機能性表示食品に関する質疑応答集」(2021年8月4日改正)の問45の「ガイドラインにおいて、「本ガイドラインにおける「臨床試験(ヒト試験)」は、「特定保健用食品の表示許可等について」(平成26年10月30日付け消食表第259号消費者庁次長通知)の別添2「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」で規定する「ヒトを対象とした試験」を指す。」とあるが、機能性については、試験食摂取群とプラセボ食摂取群との群間比較の差(有意差検定)で評価する必要はあるか」という問いに対する回答として述べられている、「最終製品を用いた臨床試験(ヒト試験)を科学的根拠とする場合は、特定保健用食品と同様に試験食摂取群とプラセボ食摂取群との群間比較により肯定的な結果が得られる必要がある」を改訂する必要があると問題提起している。
 その対案として、厚生労働省医薬局審査管理課長通知「『臨床試験における対照群の選択とそれに関連する諸問題』について」(2001年2月27日発出、医薬審発136号)で容認されているプラセボ対照以外の試験法「無治療同時対照」(無処置対照RCT=唐木氏)の採用を推奨している。その具体的な方法や疑問点にについては、同セミナー内で詳しい説明が行われた。

消費者庁へ質疑応答集の改定求める

 唐木氏は『ウェッジ・オンライン』への投稿で、機能性表示食品制度のあり方を検討するための消費者庁の委託事業「食品の機能性評価モデル事業」(2012年報告書)で評価パネル委員を務めた時のことを振り返り、「当時、検討に使った論文では明確な相加性の破綻は見られなかったため、プラセボ対照試験が使えない例が多数あることに気が付かず、この点について報告書に記載することはなかった。この問題が深刻であることを認識したのは制度の発足後に統計の誤用が多いことを知った最近のことである」とし、『日経クロステック』の指摘をはじめ、問題が日々深刻化する中、自らの不明を恥じるとの反省の弁とともに、消費者庁に対して質疑応答集の速やかな改定を求めている。

【田代 宏】

関連記事:機能性表示食品制度に警鐘鳴らす 『日経クロステック』が機能性表示食品に疑義

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