検証事業報告書めぐり佐野氏が上告 機能性表示食品「情報公開請求事件」最高裁へ
「機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業報告書(平成27年度)」の情報公開をめぐる行政文書不開示処分取消等請求控訴事件で11月9日、東京高等裁判所が消費者庁に対し1審の判決を取り消し、新たに不開示部分の一部開示を命じたことはすでに報じた。
この件について、11月30日に行われた定例記者会見で消費者庁の新井ゆたか長官は、「控訴人側の対応については現在情報を持ち合わせていないので、本日の発言はここに留めさせていただきたいと思う」と述べていたが、控訴人・佐野真理子氏(食の安全・監視市民委員会共同代表)が11月20日付で最高裁に上告していたことが編集部の調べで分かった。
報告書の全面開示を求めた控訴人に対して消費者庁は、1審で開示を命じられた「食品ごとの分析方法の評価結果」、「評価結果に対応する製品名」、「機能性関与成分名」の他に、控訴審で新たに「検体の特定に関する情報」、「検体の入手方法」、「入手ルートおよび検体数」などの開示が命じられた。
全面棄却とはならなかったものの、検証結果のコメント部分を含む全面開示を求めている控訴人はこれを不服とし、上告するに至った。
消費者庁は、情報公開法5条6号イを盾に、検証結果を開示することにより、「分析方法に関する記載内容や添付資料のどの部分について、どのような不備がある場合に問題点が指摘されるかといった点が(事業者に)推知される」と、問題点の裏をかかれて届出されて事後監視に支障をきたすなどとして、それらの開示を拒んでいる。もっとも、検証事業で指摘された問題点は事後的に補正済みであることが確認されていることを付け加えておく。
閲覧記録の中には、「どのような方法で分析方法等を検証したかが明らかになれば、事業者において、検証による分析手法の盲点を巧妙についた分析方法を届け出るなど、これを悪用する事業者が現れ、不当な行為の発見を困難にすることも十分予想できると(消費者庁が)主張しているが、分析手法の盲点を巧妙についた分析方法というものはあるのか。あるとすれば具体的にどういうものか」、「(開示すると)事業者が検証機関に対して自身に有利な考察をするような不当な働きかけをしたり、検証機関においてその可能性を踏まえて検証をしなければならなくなる。事業者がこれらを免れるべく、検証機関に対して自己に有利な分析をするように働きかけたり、その働きかけに対して検証機関が委縮する恐れがあると(消費者庁は)主張しているが、そのようなことが起きる可能性がどの程度あるか」など、これら控訴人側のいくつかの問いかけに対し、研究者が回答している意見書も添えられている。そして、2人の研究者はいずれも、偽装工作の可能性について否定している。
昨年の1審判決後、「今年度実施予定の検証事業から、単に評価結果を公にするのではなく、対象製品名および機能性関与成分、評価結果を踏まえた届出事業者の対応も含めて公にし、機能性関与成分の分析方法の検証に関し、より透明性の高い運用を図る方向で検討していきたい」と語っていた新井長官だが、すでに時は2023年。22年度の検証事業はもちろん公開されておらず、今後のことについては「何も決まっていない」(消費者庁)という。
控訴審判決主文、上告状兼上告受理申立書の一部については以下に掲示する。事件番号も記載するので、詳しく知りたければ第三者として誰もが裁判所で閲覧することができる。【田代 宏】(つづきは会員専用ページへ)
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